2003年04月20日

【酒】道中道楽(水鳥版)第4回原稿より 4

道中道楽

第4回:駅グルマンその1<池袋>

今回の道友:樽平・篝火・ハナタレ・鳳凰美田


(2003年4月20日に書いた原稿に2005年8月23日に手を加えたモノです)

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 アチコチで飲み歩く。
だが大体長いこと通う場所には馴染みの店が出来、そこ以外には行かなくなる。
酒飲みならば、グルメならば、「あの街ならこの店」が有るはず。

 でも、そういう了見の狭いの、閉鎖的なのは良くないね。。。

 そこで企画として駅単位で酒飲みがハシゴしてみようとなった。
行ったこと有る店、良さそうで気になってた店を持ち寄って
あ〜だこ〜だ、飲み歩こうと。
 次回があるかどうか知らないが、とりあえず一回目は池袋にした。
池袋西武で馴染みの『龍力』が試飲販売をよくやるのもあって、
ワリと土地勘が働いたからだ。


 最初「駅グルメ」なんて書こうと思った。でもやめた。
もちろん、
そんなどこかに有りそうなタイトルを付けることの気まずさはあるのだが、
それよりも「グルメ」という言葉の感触の問題が大きい。

 グルメって単純には「美味いものを探す」気分かと思う。
けど大半の「グルメ」っていうのは「味にうるさい奴」なんて言われる。
酒に限らない。
試しに身の回りの「珈琲通」でも「ラーメン党」でもイメージすれば
おそらく、そのクチが語る言葉の多くは
「アレが良くない、これが足りない」であろう。
 たしかに言いたくなる気持ちが判らない訳ではないし、
ここにもそんな不平不満も書くだろう・・・今回も書くと思う。
 そりゃそうで、経験値が上がれば基準は辛くなる。
でも、
気持ちの根っ子としては「不味いものを探して歩いてる訳じゃない」って思う。
楽しみたいから探してまで行ってるんだよね。
重箱の隅からでもイイから楽しいことを見つけたいよ、金払ってるんだし。

 だから美味い不味いを看板にするよりは、と、
グルマン・・・腹一杯食うことでもいいかな、と言う気分である。
どうせ不味いものなど腹一杯食えないし、食いたくも無かろう。
 要は「満足感」である。

 満足にも色々ある。
舌が満足、腹が満足、頭が満足、目が満足、気持ちが満足、
人それぞれ、どれも満足、それは「説得力」なんだと思う。
「リーズナブル」ってよくいうけど、それがバランス。


 今回はそうした「満足感」を求めての池袋飲み歩きである。
時は3月末、東京に桜の開花予想が流れた金曜日の夜8時。
天気は良いが風はまだ少し肌寒い。熱燗の時期は過ぎたけど
生ビールが一気出来る気候でもない。
 冷酒には一番かもね、って時期のオハナシ。


 第1回目ということもあって、
最初はチェーン店の大衆居酒屋に入り、
そこで扱ってる酒のインプレッションもやろうと思った。
 待ち合わせ場所に早めに着いたので何軒か見て回ったのだが。。。
久保田、浦霞、出羽桜・・・残念ながら名前と値段で味が想像できてしまう。
いや、嫌いじゃないんだよね。手頃な値段で旨い酒を造ってる蔵はエライ。
 でもこういうとこに書く場合、読んでる方だって居酒屋ぐらい飲み歩く。
まぁ日本酒のある店に5軒も行ってりゃ出会う酒と肴ばっかりじゃね。。。
で、やめた。

 特色有る一軒モンの居酒屋と酒バーとでも言うべきコンセプト店にしようと。

 最初に行こうとした店は満杯だった。
まぁ金曜日の8時台に定評のあるような店に、
5人でフラッと入ろうとしたこっちが悪いか。
萬屋松風
よろずやしょうふう、と読む。
隠れ家みたいな、山小屋みたいな、天井裏みたいな風情。
池袋では昔から好きな店である。
「なれそれ」とかも時期には有って肴も良く、
で、結構いい顔ぶれの日本酒が飲めるのだ。

 待ち合わせに2人遅刻しているのもあって、
本式に始めるのは後にして腹ごしらえしようかとなった。
手堅い銘柄の日本酒で肴が安くて腹の膨れるところ・・・と考えて行ったのが
山形の味 樽平
なのだが、銀座などにもある蔵元直送の『樽平』とは多分別系統の店である。
(実際池袋にはその系列らしき店も別にある)
 ロサ会館の2階に有ってここも昔から「そういうつもり」で良く行く。
酒は「大山」とか「住吉」とかで、肴は「玉こんにゃく」とか有るけど
「鶏の唐揚げ」とかいわゆる居酒屋メニューも並んでる。
で、安い。
 今回は「朝まではしご酒」のつもりだったので
最初の店からアレコレ食べることはしなかったのだが、
ここの料理は結構いけるのも有る。
 まぁ遅刻者が間に合ったところで店を出た。

 ロサ会館の近くには昔『舎人庵』という日本酒の品揃えと肴の充実度、
そして手頃な値段で格好の店が有ったのだが、今はもう無い。
(同じ経営系列の焼肉屋は健在なので潰れたのではなくやめたらしい)

(2005年8月現在、復活してます。移転みたいなモノだったのかも)

 もう9時過ぎである。まだ1軒しか行ってない。
となると必然ラストオーダーの早い店から行くしかないか。
今日は5軒ぐらいハシゴしたい。そんな気分でいた。

 まぁ飲み仲間も揃ったところで「それらしき」ところに行く。
篝火
かがりび、と読む。
日本全国の地酒を揃えてグラス売りで・・・という手の店である。
池袋の西口側にはもう一軒『三春駒』という同じような店があるのだが
(というよりこの2軒の店は同じ仲間の店らしい)
夕方覗いたら混んでいたのでこちらにした。

(2005年8月現在、こちらの店が無くなっています)

 この店が飲み会の口開けにいいかと思ったのは、
「純米吟醸セット」や「純米酒セット」などと言って
グラス3杯で少し割安のが有るので多人数でアレコレ味見しながら
ベースの酒量も稼げるという魂胆である。
 個人的に言えば『篝火』という岐阜の地酒が、
大昔に、いわゆる「地酒」に目覚めた最初だった。
そういう思い入れが銘柄にあるのもあって昔から何度か来ていた。
 これまではカウンターでいいネタを肴に1杯2杯飲んでたので気づかなかったが
奥の座敷に入ってしまうと運びの店員さんがあまり酒に詳しくない。
「この『しぼりたて』っていつ絞った奴?」程度の軽いマニアな質問にも
全く対応できないという経験をした。専門店だろうに。。。

??????????????????????????????????????????????????????
 ただこの手のことは今の居酒屋事情では半分諦めも入る。
ただでさえ
バイトレベルでは専門店のこだわりを理解して働いているなんて珍しいだろう。
ましてや
実際のところ日本語もたどたどしく一生懸命働いているアジアの朋友達が多い。
それならそれで店長が出てくりゃいいのだが、
そこまでやってくれるのは開店して3年目ぐらいの
気合いが入った店だけな気がする。


 どんな飲食店でも言えることだと思うが、
店を作るときは「ああしたい、こうしよう」の固まりだから
スタッフの一人一人も気合いが入っていて「いい店」であるはずだ。
(いい加減な気分で飲食店を始められるほど楽な御時世ではないと思う)
「いい店」で「これなら勝負できる」と思ってるからこそ新規参入してるはずだろう。

 ところが店がある程度軌道に乗ると「慣れ」が出る。
永遠にベンチャービジネスでは経営者は心労が絶えない。
ある意味それは失敗してる訳で
店が軌道に乗ると言うことはルーティンワークが増えることを意味する。
でもルーティンワークって退屈だ。スタッフにも「飽き」が入る。
それは何となく客にも伝わるものだ。

 そこで経営者としては更なる開拓を、とか、
新メニューの開発を、となれば素晴らしいのだが、実際「守り」も出てくる。
「これでそれなりにうまくいってるんだからいいじゃないか」
 こうなってこそ飲食店経営としては安定してるのだけど、
今は「新しい店」がどんどん出てくる。そっちは気合い一杯。
今や「前から有る店」は昨日と同じ今日をなぞる。
去年の今頃と同じメニューじゃない店というのがどれだけあるのだろうか。
もちろん
「あの店の『アレ』を味わいたいから行く」というのは大事だと思う。
でも店自体のテンションが下がってしまっては新しい客は寄ってこない。

 そういう意味で「前から有る店」というのは
常連客の思い入れや馴染み故の楽しみを除けば光を失いがちなのも事実。
「本質を見失わずに目先だけは常に変化させる」
そういうことって
客は贅沢だからいくらでも要求するが
店の側からすれば難しいのだろうと思う。
 でも客はお金を払った以上は満足を求める資格がある。
贅沢は言わせて欲しいよね。

 こういうことは飲み食い道楽してばかりの俺は意識してるけど
普通は「何となく」「足が遠のく」だけなんだと思う。
「いい店」が減って欲しくはないのだけど、
増える分と経る分の差し引きで、
やっぱり総量は増えない気がするのは錯覚だろうか。
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 なんてことは帰ってから考えたので、
その場ではチラッと感じただけなんだけど、
そこで次の店は気合い系、
「コンセプト」なんてものの有りそうな飲み屋に向かうことにした。


 一昔前までは、いわゆる「おしゃれな店」にはロクなのが無かった。
内装は凝ってて雰囲気はいいけど目先が変わってるだけで内実は空虚。
見かけ倒しで料理の味付けが甘っちょろい、酒も有名で飲みやすいのばかり、
何度も無駄遣いをした。
嫌な思いをして飲み直しの労を執らざるを得なくなった。

 でも近年はそのあたりの店もそれなりに実力が伴ってきた気がする。
となれば、そういう店に通う人種の舌も肥えてくる。
舌の肥えた人種を満足させる店を作らなければ、そういう店も成り立たない。
好循環が起きてる気がする。
 もっとも、今そういう店に金を落とすのは
自由になるお金を景気に大きく左右されずに持ってるような
大学生から独身サラリーマン世代の男女であって
昔から居酒屋に居たオヤジ達ではなかろう。

 オヤジ達はどこへ行く。。。
そういう店も今回の飲み歩きの候補には考えていたが、
次回の飲み歩きが新橋だということにしたので、
それはそっちでやることにした。


 さて池袋、地下道をくぐって東口へ抜ける。
サンシャイン通り、東急ハンズ裏手、
のみくい処 如月桃花
きさらぎとうか、と読む。
ここは週末は明け方までやってる。平日でも閉店が遅い。
早めに来るといい肴に有り付けるが、遅く行っても外れがない。
「飲み直し」に最近よく利用する。
 屋根裏部屋のような店内、心配りも加減がよい。
日本酒も結構いいのがあるが、
個人的に目先を変えて焼酎の「爆弾ハナタレ」にした。
ここは焼酎のいいのが揃ってる。
 ここで言う焼酎には酎ハイとかは入れてないのはもちろんだが
最近は焼酎を揃える店も増えた。焼酎は旨味の弱い肴では頼りない。
地鶏などを加減良く料理したのなどがうれしい。


 店を出たらもう夜中である。池袋にもう電車なんか走ってない。
かなり酔ってるし、まぁ最後の店という感じ。
こうなると安心できる店がいいね。
先日、栃木の蔵元、鳳凰美田のイベントでメンバーが仲良くなった店、
豊島公会堂の裏手、
日本酒バー&レストラン 蛍月
ほたるづき、と読む。
 ここもコンセプト系の気合いの入った店だった。
低い照度で贅沢な空間、夜中の酔眼には心地よい。
飲んだ酒はもちろん鳳凰美田。他にも何か。
肴も頃合いの仕上がりで結構旨かった記憶があるが・・・
残念ながら、かなり酔ってて個別のコメントをする記憶に欠ける。


 明け方に店を出た。
ラーメンでも食べようと思ったが、周囲に見あたらない。
酔っぱらいが駅までのコースから外れて
一杯のラーメンを求めて彷徨うにはチトみんな酔いすぎていた。
ので、立ち食いそば程度で仕上げ。
 ほとんど始発の電車に乗って帰ることに。
よく飲んだね。。。
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 今回は池袋編だったが、池袋はこんなものでは当然語り尽くせない。
でもまぁ酒好きの酔っぱらいのやることは同じ。
またやるかもしれないけど、その前に違う町もウロつこうと思う。
次回「駅グルマン」は新緑の季節に新橋の予定である。
 今度は是非行きたいと思う。
「オヤジ達」の店に。


ruminn_master at 2003年04月20日 23:00 【酒】道中道楽(水鳥版)第4回原稿よりコメント(0)トラックバック(0)  このエントリーをはてなブックマークに追加


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