2006年09月12日

【見】東京の酒蔵探訪その1「嘉泉」 4

Mixi経由の社会科見学

今回は東京の蔵元さん2軒にお邪魔した。

東京には現在日本酒の蔵元が13軒有る
(数え方に依るのか12軒、11軒なんて意見も有る。同族会社とか有るかもね)

01.「国府鶴」/(名)野口酒造店
02.「桑乃都」/訃澤酒造場
03.「日出山」/(有)中島酒造場
04.「多満自慢」/石川酒造(株)
05.「大多摩」「酔悦」/大多摩酒造(株)
06.「澤乃井」/小澤酒造(株)
07.「丸眞正宗」/小山酒造(株)
08.「嘉泉」/田村酒造場
09.「鳳桜」/土屋酒造(株)
10.「金婚」/豊島屋酒造(株)
11.「千代鶴」/中村酒造場
12.「喜正」/野崎酒造(株)
13.「吟雪」/渡邊酒造(名)

13軒有るとはいえ、「見学不可」を表明されているところも有る。
今まで見学可能だったのに急に「見学不可」になるところもある。

単に企業秘密の問題や人手不足という理由もあるだろうけど
誰か迷惑をかけたりしたんだろうなぁ、とか思われることも有る。


酒蔵に限らず他の見学会についても言えることだけど、
参加者にもいろいろ居るので
写真撮影禁止でも目の届かないところで盗撮する者が居たり
本来公開する予定の無いところに無断で踏み込む者が居たり
非常識な迷惑を掛ける者が出てしまうことも有る。

「わざわざ見に来てやってるんだから、もっとサービスしろ」と言わんばかりの態度の者や、言葉の端々にそういう気持ちが見て取れる者も少なくないように思う。

案内・説明して下さってる方に、わざと「嫌がりそうな」質問をして喜んでる風情の人も居る。そんな人は「どうだ鋭いだろう」と言わんばかりの自己満足が滲み出ていて周囲から見ていれば滑稽なのだが本人に気付く様子は無い。

見学会を受け入れてくれる企業や施設は、たしかに広報活動や宣伝の側面も少なくないだろうが、何も「そんな奴ら」に見せる義理や責任がある訳ではない。

大人として人間として、縁もゆかりも利害関係も無い奴にわざわざ「見せて貰える」ことに感謝しなきゃね。


ただでさえそんな風に最近流行の「大人の社会科見学」一般についても難しさが有るのに加えて、酒蔵見学は「酒」ゆえの難しさも加わる。

過去に個人的にも別の団体でも酒蔵見学は何度も行ってるのだけれど、泥酔者が出たり、そこまでいかなくても「自分が旨い酒さえ飲めりゃいい」ってな者も結構居たりして、酒蔵見学は「酒」ゆえに相手や周囲に迷惑を掛けやすい面がある。

蔵見学を原則「不可」とする蔵元さんの気持ちは十分に想像が付く。

だからこそ、受け入れて、ちゃんと案内して下さる蔵元さんはとても貴重だ。


今回は先の一覧表で太字になってる2軒、
嘉泉」の田村酒造場さんと
多満自慢」の石川酒造(株)さんに伺った。


まず午前中は「嘉泉」。

JR青梅線の福生駅に降りて小雨の中徒歩10分弱。
駅前通から少々鬱蒼とした木々の有る細道に少し入る。

そこに古い煉瓦造りの煙突が目立つ立派なお屋敷があった。

「まぼろしの酒 嘉泉」の醸造元田村酒造場さんのお屋敷と工場だ。

かなり広々としたお屋敷の中に酒蔵が有るという風情で、
少なくともここが「東京都」とは思えない程の贅沢な空間。

歴史有る空間に最新の酒造設備を内包する蔵元、それが嘉泉だ。

1.現代的酒造空間


見学者が揃ったところで蔵の中に案内して頂く。
01蔵入り口へ

何と言っても9月の上旬、蔵元にもよるけれど仕込には少々早い時期。
ここもまだ最初の洗米・蒸米などが始まったばかりとのこと。

以下、実際の見学順とは異なり日本酒醸造の工程順に整理します。
(プロセスの詳細などは共通しますので別の蔵の見学記【酒】酒蔵「龍力」蔵見学をご参照下さい)

1-1.精米

この蔵元では山田錦、五百万石、吟ぎんがを酒造に用いるとのこと。
そして精米段階は自社で行わず、千葉県にある共同精米所で磨かれた米を使用するそうだ。
03精米

1-2.洗米

お釜の向こうに見えているのが洗米マシン。
04洗米

1-3.蒸米

洗米機とベルトコンベアで繋がれた隣に蒸米機。
05蒸米

結構な割合で機械化されているが、ここで蒸し上がった米を冷まして次の工程に進めるのは手作業。

1-4.麹室

温度管理されたサウナのような空間で蒸したお米に麹が育つのを待つ。
06麹室

1-5.酒母

ここから先の行程はまだ開始されていないので空っぽです。
麹となった最初のお米に水と新たな蒸し米(掛け米という)を足してお酒の元を造る行程。
お米からいきなり大量のお酒に変えさせようとするのは微生物の能力限界を超えるので何段階かに分けてお酒を育てていくことになる。
その最初のタンク。
07酒母

スタートの温度は摂氏7度程度だそうだが、そういう温度管理を徹底すべく、タンクの周囲には冷水あるいは温水を巡らせて温度をコンピューター制御で一定に保つ仕組みが設けられているとのこと。

1-6.仕込

前述の酒母タンクの隣に一群の少し大きなタンク。
お酒が育ってきて大きくなったらこちらに移して育てるらしい。
08仕込

1-7.絞り

この機械ももちろんまだ稼働段階にないので準備中の状況。
先ほどの仕込タンクとはパイプで結ばれてるらしい。
いわばフィルター群の中に注ぎ込んで酒粕と清酒に分離する行程。
09絞り

1-8.熟成

絞ったお酒を貯蔵するタンク。
10熟成タンク

この後、お酒は火入れ(殺菌)や瓶詰め、ラベル貼りなどを経て市場に出荷される訳です。

2.歴史有る酒造業として


この田村家は西関東の酒造業の起点のような位置づけです。
福生村の名主を代々つとめていた私ども田村家は、文政5(1822)年九代目勘次郎の手により造り酒屋という家業を興し、ここに蔵元としての歩みを開始しました。
私どもは明治中期まで総本店として、武州一帯(多摩地区、神奈川県、埼玉 県の一部)に24の店蔵をもち、経営面、技術面において各蔵を指導する役割も担っていました。
http://www.seishu-kasen.com/yurai/yur2.html#1

先ほどのタンク群にしても古い蔵の中に有ります。
蔵の天井を見ると、戦時中の物資不足の時代も耐え抜いてきた風雪を感じさせるような趣です。
11蔵の天井

そもそも行程も始まっていないでしょうから已むを得ないですが、
今回見せて頂いたエリアの奥に、
昔ながらの手作業で日本酒を仕込むための作業場が別途有るそうです。
そこで造った特別なお酒が鑑評会などに出品されるとのこと。

そういえば見学エリアの突き当たりに小型の洗米機が有りました。
12古い洗米機


見学会は蔵の建物を出て側面に回ります。
13蔵外壁

そこに『嘉泉』の名の由来となった古い井戸が囲われ祀られていました。
14酒造用井戸

今でもこの水を仕込水としているそうです。
酒は水が命、
この井戸は蔵の歴史そのものと言えるでしょう。

この井戸を挟むように蔵と田村家の家屋敷が並んでいます。
その庭に回ると欅の古い大木が佇んでいました。
15欅の古木

天然記念物指定も受けそうになった推定樹齢700年の古木で、
数年前に樹医によって治療されて今なお生きながらえています。
この巨樹が醸造蔵を直射日光から守る役割をしてきたのだと。
16欅の木陰
当然、蔵元の歴史より古いのですからこの木の在ることを前提に蔵を建てている訳で、上手く自然を利用しています。

自然と言えばこの蔵元の広い敷地のアチコチに流水が引き込まれています。
17蔵の周囲の引き込み水

玉川上水には分水が3本有るそうで、その内の1本。
それが
玉川上水田村分水。
「田村」の名前が使われているところ縁も深そうで、
屋敷の裏手には水車小屋(跡)、
19水車小屋へ

潜り戸を抜けると運河のような水路に通じています。
20玉川上水田村分水

一時は水運にも利用したそうですが
広域にわたり利用される分水、汚す訳にもいかず水力や日常水として利用したようです。

分水縁には取水口を示す標柱が建てられています。
21上水取水口

ここから取り込んだ水が水車小屋で動力に生まれ変わる時代もあったとのこと。
24水車小屋

今ではその建物と水路と軸受、石臼などが飄然と置かれているだけです。
22水車のあった部分
23軸受けと石臼

3.利き酒


見学会の最後は試飲させて頂きました。
25利き酒会

3種類、それぞれ特徴的なお酒です。

この『嘉泉』、
名前の由来は先の欅の脇の井戸ですが、
「まぼろしの酒」との異名は現当主のコダワリが故。
時は昭和50年前後。嘉泉は、前代未聞の試みに着手しました。
「抜群の高精白を誇る、本醸造を造る。それを二級酒として販売する」、
それは現当主15代田村半十郎の大英断でした。酒の名は『まぼろしの酒 嘉泉』。
醸しだされた酒は、これまでに例を見ない優れた酒質から、酒通の間で大評判。
以降、嘉泉といえば「まぼろし」がその代名詞となって今日に至っています。

思えば私ども嘉泉には先代・半十郎のこんなエピソードも残っています。
時は戦中・戦後。
甘い酒がもてはやされ、嘉泉の特長である辛い酒は売りにくい時代でした。
杜氏は思い余って進言したという。しかし、前当主はきっぱりと突っぱねたそうです。曰く、
「ばか、言うんじゃねえ。昔から酒呑みは、辛党と言うじゃねえか。甘党には、羊羹をやればいいや」と。
http://www.seishu-kasen.com/yurai/yur2.html#3


なかなか歯応えのある蔵元さんのようです。

さて味見。

まずは特別本醸造
先のコダワリからすると、これこそが『嘉泉』の看板とも言えるお酒でしょう。
28特別本醸造

特別本醸造  幻の酒
酒造好適米を60%まで精米し、吟醸酵母を使用した特別本醸造酒。旨口にして、味のふくらみがあり、しっかりとした飲み口、いつまでも飲み飽きしない後口の良さがその魅力。まさに訪ね歩き探し求める幻の酒。晩酌用、宴会用に最適。

精米歩合 60%
日本酒度 +1度
酸度 1.4度
アルコール度数 15度以上16度未満
飲み方 冷酒、常温、ぬる燗で
720ml詰 \1,003
http://www.seishu-kasen.com/omot/omo_hon.html

・・・これ酒飲み向きの酒です(笑)。
最初はコレと言って惹かれないのですが常温でも飲み飽きしない程よい旨さ。

次は季節限定品の純米吟醸生酒
27純米吟醸生酒

純米吟醸 生酒
酒造好適米を高精米し、大寒の折、杜氏達が醸し出した純米吟醸の生酒。香りよく、味淡麗、なめからな喉ごし。とくに含み香が素晴らしく、清涼感あふれる生酒。

精米歩合 55%
日本酒度 +1度
酸度 1.6度
アルコール度数 15度以上16度未満
飲み方 冷酒、常温で
保存方法 要冷蔵

720ml詰 \1,612
http://www.seishu-kasen.com/omot/omo_nam.html

・・・女性陣には特に大人気でしたね。
サッパリとした飲み口に、ほどほどの香り良さです。

最後は小瓶で特別限定品の「田むら」。
先述の古典的な酒造りを行って、いわゆる袋絞りで集めたお酒です。
29田むら純米吟醸

田むら
岩手県産の酒造好適米「吟ぎんが」を55%まで高精米し、低温長期醪で醸造。手間のかかる袋取りと瓶燗火入れを採用した純米吟醸酒。味と香りが絶妙な蔵元一押しの自信作。穏やかにしてフルーティー、かつ余韻が深いお酒。

精米歩合 55%(吟ぎんが)
日本酒度 +1度
酸度 1.7度
アルコール度数 16度以上17度未満
飲み方 冷や、常温

720ml詰 \1,400
http://www.seishu-kasen.com/omot/omo_to

・・・お米の性質なんでしょうか、この手の造り方の他の酒に較べて淡泊に感じます。
蔵元の好みが「辛口」だからこその方向性かも知れません。
袋絞りとかいうと甘い酒が多い中でサッパリと飲みやすい。
手間ヒマのワリに安めの価格設定なのも蔵元の意気を感じますな。


12人程参加した見学会としての一番人気は2番目の純米吟醸生酒だったと思います。
私一人がきっと大酒飲みなので(笑)試飲でも最後まで特別本醸造を愛飲しておりました。

この蔵元さん、コダワリを知れば知る程に興味深いですね。
また伺いたいと思っています。

ruminn_master at 2006年09月12日 11:30 【見】東京の酒蔵探訪その1「嘉泉」コメント(0)トラックバック(1)  このエントリーをはてなブックマークに追加


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2006年9月12日、奥多摩方面に酒造見学に行ってきました。 事の発端は、日本最大のSNSである mixiのコミュニティのひとつ 「社会科見学に行こう!」コミュで 以下のような募集があっ...

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