2007年07月12日

【芸】落語「真景累ヶ淵」が映画「怪談」になった 5

長いハナシなので、まず結論として映画「怪談」オススメです。

とっても怖いけど、素晴らしく美しい。

さて

東西落語研鑽会が拡大するような形で夏の銀座の風物詩となって5年目にもなろうという大銀座落語祭

その2007年度のオープニングスペシャルイベント。

落語にも大きく3つに落とし噺、人情噺、怪談噺、その他にも艶噺など色々有るけれど、今回は夏に相応しく怪談噺。

「怪談『真景累ヶ淵』 落語と映画で楽しむ会」−『怪談』試写会付き−
真景累ヶ淵をお聴き頂いたあと、夏に公開する、尾上菊之助・黒木瞳主演の「怪談」をひと足先にご覧頂くスペシャル企画。バス移動のあと有楽町マリオン(丸の内ピカデリー2)では350名の貸切りです!!

解説:鈴々舎馬桜
出演:古今亭菊之丞「豊志賀」
全席指定
料金:1,000円(税込)
http://www.ginza.jp/select/event/rakugo/06.html


要は幕末から文明開化にかけての落語家、三遊亭圓朝が21歳の安政6年、つまり今からざっと100年前に作った怪談、「真景累ヶ淵」

この春に版を改めて岩波から再版されたそうだ。

真景累ヶ淵 改版


それが今回映画になって世界中に配給されると。

poster

まぁ映画とのタイアップなんだろうけど(笑)、落語としても名作だしオープニングには相応しいかもね。
そもそも怪談の代表と言えば歌舞伎(鶴屋南北)の「東海道四谷怪談」、浄瑠璃(合作)の「播州皿屋敷」、そしてこの三遊亭圓朝の作った落語「牡丹灯籠」と「真景累ヶ淵」なのだから。

この「真景累ヶ淵」

元になったのは江戸初期、今の茨城県で実際にあったと言われる実際の怪異譚が元になって生まれた累ヶ淵の伝説。
この実話そのものもかなり怖い60年にわたる因縁話で、落語以前に鶴屋南北が歌舞伎「かさね」に仕立てている。

それを前提に怖さを上積みしたのが三遊亭圓朝の真景累ヶ淵

盲目の鍼医者で金貸しの皆川宗悦が貸した相手の旗本・深見新左衛門に理不尽に斬殺され、その累ヶ淵に沈められたところから噺は始まり、その恨みと累ヶ淵の祟りが重なって、被害者・加害者それぞれの子孫とそれを取り巻く人々が次々と。。。

とっても長い噺で、1日1時間やったとしてそもそもの昔は15日掛かったとか(今回のイベントでの鈴々舎馬桜さんの解説)。
作者圓朝縁のサイトでは13分割してある。
AllAbout落語では8分割してある。
近年では通しで演る人も珍しい中で桂歌丸さんの出してるCDでは5分割、5枚組で4時間程だ

桂歌丸「真景累ヶ淵」


原作に照らしてトータルで見ると

1.宗悦殺し
 (因縁の始まり)
2.深見新五郎
 (加害者の長男→被害者の次女)
3.豊志賀の死
 (加害者の次男→被害者の長女)
4.お久殺し
 (豊志賀の祟りその1)
5.お累の婚礼
6.勘蔵の死
7.お累の自害
 (豊志賀の祟りその2)
8.聖天山(湯灌場)
9〜11.(タイトル無し。伏線)
12.お熊の懺悔
 (豊志賀の祟りその3、決着)
13.(タイトル無し。全ての決着)

なんて筋立てだろうか。

そして部分部分が工夫されて様々に演じられるみたい。
そして一番のカナメは上で太字にした通り
3.豊志賀の死である。

親を殺された側の豊志賀と、殺した側の子である新吉が知らずに出会い、深い仲となり、でもって。。。

ってところがこの怪談の一番怖い部分なんでしょう。

怪談 真景 累ヶ淵より 豊志賀の死 [江戸怪奇夜話し 第1話]


さて、今回のイベント。

第一部は浜離宮朝日ホールで、あらすじの解説を鈴々舎馬桜師匠より。
そして件の3.豊志賀の死古今亭菊之丞師匠が一席。

上の方に書いた能書きのアチコチにはここで聞いたハナシもいっぱい入ってます(笑)。

怪談噺って、軽すぎても重すぎてもダメだから難しそうね、落語としては。


そして第二部はバスで移動して丸の内ピカデリー2へ。

怪談
公式サイト
公式Blog

同じネタを映画という枠組みでどう表現するかが見モノ。

しかし何と言っても近年では久々に大ヒットのホラー映画「リング」シリーズの中田秀夫監督が作ったのだから怖さとしては覚悟の上でした。

最初にまた少し鈴々舎馬桜師匠より解説。

怪談00

先に掲げた原作の流れで言うと
1.宗悦殺しが有って
2.深見新五郎は飛ばして
3.豊志賀の死がメイン。
その中で原作では2で死んでるお園が絡んできます。
4.お久殺し
5.お累の婚礼と進んで
6.勘蔵の死も飛ばして
その間に
原作上は後半の要のお賤が登場、
7.お累の自害辺りからストーリーが大きく変わって映画としての結末に進んでいくことに。

・深見新左衛門:榎木孝明
・深見新吉:尾上菊之助

・皆川宗悦:六平直政
・(長女)豊志賀:黒木 瞳
・(次女)お園:木村多江

・お久:井上真央
・お累:麻生久美子
・お賤:瀬戸朝香

ハッキリ言って怖かった。
けど

ドキーッ!

ってしたのは3回ぐらいで、
あとは「何が起きるんだろう」のゾクゾク系がずっと続く感じ。

追い詰められるような怖さは一部に使われていた一龍斎貞水師匠の講談の部分がもっとも怖かった。

でもスプラッタな演出は抑え目で画面が見事に美しく、
これは日本の美の一つ「幽玄」ってレベルなのかも。

1024_768_a

(画像は上記公式サイトで配布されてる壁紙の一つです)

主役の尾上菊之助、黒木 瞳が
ときに美しく、ときに恐ろしくと
見事な表現なのは流石当然だと思うけど、
井上真央が予想以上に芸達者だなぁと感心。

もともと小悪魔的な容姿の女の子が役柄に見事にハマってましたね。

そういえばどの女優さんもキャラクター設定と見事にマッチしてそれを表現しているような美しさをスクリーンの上で見せてくれていました。

やっぱ美人じゃないと怪談芝居は務まらないね。

醜いだけじゃ目を背けるけど怖いモノにはつい惹き込まれる魔力があるから。

風景、衣装、女優陣、歌舞伎俳優が織りなす映像美は怖さに酔わせてくれました。

ホラーってあんまり好きじゃないんだけど、これはなかなかオススメの一本。

--

真景累ヶ淵 (中公クラシックス J 34)
怪談累ヶ淵
圓生百席(55)真景累ヶ淵(しんけいかさねがぶち)?1「宗悦(そうえつ)殺し」?2「深見新五郎」
圓生百席(56)真景累ヶ淵(しんけいかさねがぶち)?3「豊志賀の死」?4「お久殺し」
圓生百席(57)真景累ヶ淵(しんけいかさねがぶち)?5「お累(おるい)の婚礼」?6「勘蔵の死」
圓生百席(58)真景累ヶ淵(しんけいかさねがぶち)?7「お累の自害」?8「聖天山」


ruminn_master at 2007年07月12日 22:10 【芸】落語「真景累ヶ淵」が映画「怪談」になったコメント(0)トラックバック(0)  このエントリーをはてなブックマークに追加


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