ズガニ

2003年02月07日

【食】道中道楽(水鳥版)第2回原稿より 5

道中道楽

第2回:ズガニって知ってます?

今回の道友:『磯自慢』純米大吟醸


(2003年2月7日に書いた原稿に2005年8月23日に手を加えたモノです)

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 伊豆急で下田より少し手前に河津という温泉郷がある。
河津桜という寒桜で有名なところ。
見頃は2月の20日前後だが大体その前後1ヶ月は「桜祭り」らしい。
とはいえ年によっては3月に入ると散ってしまって葉桜、1月の末ではまだほとんど咲いてない様子。
今回訪れたのは1月の末。桜並木にはほど遠いが何本かは咲いていた。

 桜には人工的に掛け合わせて作ったものも多いが、この河津桜は自然交配というのか、
まぁ風か虫か鳥かが花粉を運んだそうで、少なくとも人間が無理から作ったものじゃないらしい。
元はいわば偶然の産物のような一本の桜だったのが増やして増えて川縁に並ぶまでになっている。
盛りのシーズンには見事なものだと町中に飾られた写真には感心するが、
生憎いつもここに来るときは盛りのシーズンを外してしまっている。
今回は、「これが最初の1本」とタクシーの運転手さんに教えられた桜の木のほど近く、
何でも温泉の湯が流れる場所に根を張ってるのだとかで季節感のずれた気の早い桜が一本。
それが最初に見た桜花だった。

 それはそうと今回は桜を見に出たのでは無かった。
「ズガニ」である。
日本版上海蟹というところか。爪に海草のような毛を生やしたモズクガニである。
秋から冬にかけてのこの地方の味覚であるそうだが、どこでも食べられるというものでは無いらしい。
最近では食べられる店も減ったそうだ。美味いと聞いて食べに出た。


 東京から踊り子に乗って数時間。新幹線は乗り換えが面倒なので踊り子にした。
数時間の道中。通過する空模様は晴れたり曇ったり。

 一駅手前で降りて町営の温泉施設でとりあえず車中で固まった手足を伸ばす。
この『サンシップ今井浜』という温泉は湯船は内湯も岩場の露天風呂も大きくない。
だが、いずれも太平洋を眺めながらとなってて気持ちがよい。
水着を着て屋上に出ると混浴の温水プールになっている。
天気もそこそこだったので、まぁ楽しめた。


 風呂からあがるともう夕方。いよいよズガニの宿に入る。
河津温泉郷の中にはいくつかの温泉が有るが、その中の湯ヶ野温泉。
そこの民宿「かごや」である。
ここのオヤジは有名なズガニ採りの名人だということである。
ズガニ漁は、夕方にエサを入れた竹かごを河津川に沈めておくと朝方には何匹か入ってるという漁法。
だから「かごや」か、と納得がいく次第。宿の中には竹細工体験教室の案内も有る。
どうやら現役の道具らしい竹かごも並んでいる。

 さていよいよ待望の晩飯。
かなり有名な宿らしく食堂となった広間の壁にはサイン色紙やらテレビロケの写真が一杯だ。
気のいいジィチャンって感じの大将が顔を出す。ズガニ採りの名人の登場である。
 食卓にはズガニ料理一式が並んでいる。
目の前には姿茹でのズガニがまず一匹。手足を伸ばせば20センチは超えそうだ。
唐揚げ、カニ鍋も出ているがまずは塩茹でのズガニと格闘する。
料理のコメントには禁句なんだろうけど、美味いもんは美味い。
出された料理鋏で毛むくじゃらのハサミ部分を散髪。中の身を穿り出す。
手足は細いので大きな身ではないがズワイよりは毛ガニに近い甘さがある。
で、何といってもミソが美味い。上海蟹ほど脂っこい感じが無く、淡泊に旨味が有る。
唐揚げは旨味が閉じこめられている。カニ鍋は新鮮なカニ臭さが食欲をそそる。

 そこで出てきたのが一番の自慢料理らしいカニ汁。
「ズガニを叩き潰して味噌と合わせて擂り鉢であたり、カラとカスを取り除いた味噌汁」
とのこと。味噌と合わせられても個性を失わないいいカニである。
で、仕上げはカニ飯。ズガニのブツ切りの炊き込み御飯。
個人的にはこれが一番美味いと感じた。
何といっても蒸し蟹状態。旨味が閉じこめられてるのである。
ズガニ尽くしで腹一杯。ビールやら酒やらも飲んだけど食う方が忙しかった。


 夜も遅くなって同じ湯ヶ野温泉の中のカラオケスナックを訪れる。
ホテルフレンドキャッスル
道路に面した階の店の奥がカラオケスナックになっているのだ。
このホテルでありズガニ料理の店でありスナックでもあるところに数年来の飲み仲間が居るからだ。
 この店で水鳥新聞のイベントをやったこともあった。
『高砂』の蔵元さんを呼んでの利き酒会というか食事会というか、まぁ宴会である。
小さいながらも地下に温泉が引いてあり、宴会場もあってホテルになっている。
旨い日本酒と肴を飲み食いしたいだけして温泉に入って寝るだけ。
極楽イベントだった。
 スナックでは地元のオッチャン達がノド自慢してる。
結構上手いなぁ、って感じ。
『磯自慢』純米大吟醸の4号瓶を一本開けて帰ってきた。

 翌朝。「かごや」の心づくしの朝食をいただいての帰り道、
温泉郷に名残を惜しむべく「踊り子温泉会館」に立ち寄った。同じく町営の温泉施設である。
こちらはサンシップより広くて綺麗だが景色は向こうの方が上。とはいえなかなか良い湯心地だった。
どうやら地元の人が多い感じだが、まあ観光シーズンになれば混みそうね。


 これで道中が終わるかというと、、、「道楽」はまだまだ。

 帰りに稲取に立ち寄る。吊し雛で有名な町。
大きな旧家などは雛祭りの頃に自宅を開放して吊し雛を公開する町なのだ。
先祖伝来のお雛様とその周りに吊した手作りの飾りである「吊し雛」。
まだ雛祭りには早い時期。文化会館の展示だけ見て昼食へ。
 ここ稲取で評判の網元料理「徳造丸」 。
ハッキリ言って「凄く美味い魚料理が安く腹一杯」食えた。
ズガニは季節が限られるがこちらは通年営業。
文句なくオススメである。

もうこれ以上は入らない。飲めない。。。という状態で上りの「踊り子」に。

 命と縁のある限り、またどこかへ楽しい道中をね。

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ruminn_master at 2003年02月07日 23:00 【食】道中道楽(水鳥版)第2回原稿よりコメント(0)トラックバック(0)  このエントリーをはてなブックマークに追加
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