2003年02月20日
【食】道中道楽(水鳥版)第3回原稿より
道中道楽
第3回:鮟鱇の七つ道具(茨城県平潟港)
今回の道友:『富久心』純米吟醸(茨城県:合資会社椎名酒造店)
(2003年2月20日に書いた原稿に2005年8月23日に手を加えたモノです)
------------------------------------------
アンコウ鍋は何回も食っていた。
それなりに「美味い」って思ってた。でもフグの方が好き。
関西人だからってのもあるだろうけど「テッチリ」の方が馴染みがある。
でも「肝が食える分だけアンコウが上」とはよく聞くハナシ。
もちろんアンキモなんて飽きる程食っていた。
東京じゃ冬場の居酒屋で置いてない方が珍しいだろう。
居酒屋でも美味い店もある。ポン酢の加減が良い店。
本気で不味い店も有る。油臭いだけの粗雑なアンキモ。
だから平均してみると「大して美味いもんじゃない」となる。
僕もそう思える程には「飽き」ていた。
でも鮮度の良いものなら、違うかも。そう考えていた。
あの「美味しんぼ」の初期の作品で
捕れた漁船の上で処理したアンキモを
「フォアグラより美味い」と評していた。
(あのマンガ自体は功罪正誤色々あるけどね)
なら本場で食ってやろう
・・・大体こんなことで旅に出ることが多いのだが、
それを研究熱心と・・・
だれも言ってくれないだろうから
正直に「食い意地」と、ここは白状することにして、
茨城県平潟港に向かったのである。
上野からの常磐線。「すーぱーひたち」で1時間50分。
ただ下りは2時発が1本、上りは朝夕に2本しか無い。
もちろん鈍行はそれなりに走っているけど、
ほぼ福島との県境なので鈍行で行くには中途半端に遠い。
上野駅2時発で旅に出る。大津港駅で下車。
2月頭のことである。水戸偕楽園の梅林には少し早い。
曇り空でやっぱり少し肌寒いのでまずは立ち寄り湯に。
バスで20分ぐらいのところに
五浦温泉「天心の湯」というのが有る。
この「天心」は美術思想家の岡倉天心である。
岡倉天心は越前藩(福井県)で横浜生まれだが
この辺りを静養先にし、一時は作画活動もしていたので
五浦には分骨された墓もあるそうだ。美術館もある。
ということはさておいて(笑)、
しょせん向かう先は美術館ではなくて日帰り入浴の温泉施設。
別に横山大観の日本画が飾ってあったような記憶はないが、
まとまりのいい源泉利用の温泉であった。
ここにあった「白泥浴」という蛙目石粘土の細粒を溶かした
泥湯(濁ってる程度で、粘ってる訳ではない)は
美容に良いそうで・・・って僕には効能の意味が無いけど
まぁ気持ち良かったね。
そこで小1時間程のんびりしてからタクシーに少し乗る。
ちょうど晩飯の頃合いに宿に到着した。
温泉民宿「相模屋」さん。
入り口には鮟鱇の絵の行灯。
入り口を入ると新日鉄釜石の合宿写真らしいのが飾ってある。
2階の奥の部屋に入れて貰った。床の間もあって綺麗な部屋である。
ここの温泉も循環器を使わない天然温泉だそうだが
なにぶん巨体の身、こぼれるお湯が勿体ない(笑)
というより立ち寄り湯を上がったばかりなのでそのまま夕食を待つことにした。
アンコウ鍋とアンキモ、アンコウの友酢和え、
アンコウの唐揚げ、にプラス基本的夕定食のコース。
「本場のアンコウで満足のいくコースで」と頼んだ。
酒はビールと地酒の『富久心』純米吟醸。
ここの鍋にはアンコウ鍋以外に「どぶ汁」が有る。
「どぶ汁」とは名前は悪いがダシも野菜も使わずに
アンコウの水分と肝だけで作る濃厚な鍋だとかで
まぁ初心者には強烈すぎるかもとアンコウ鍋で遠慮した。
基本的なメニューの中の魚類も美味かった。
その日の刺身盛り合わせは
あいなめ、ほうぼう、すずき、かんぱち、
白身魚の盛り合わせである。
煮付けは「のどぐろ」
富山でよく見かける白身魚の赤ムツである。
考えてみればアンコウだって白身魚か。
白身尽くしである。
さていよいよアンコウ。これを食べに来たのだ。
最初に口にしたのがアンコウの友酢和え。
蒸し上げたアンコウの身と皮を肝を混ぜた酢味噌で食べる。
蒸し物は魚臭さが残るから酢味噌で食べようという訳だが、
友酢になってるのでサッパリした中にも旨味がシッカリ。
アンコウの唐揚げはアンコウの身と皮となすびの唐揚げに
甘辛の汁をかけたもの。ビールに合うね。
アンキモ。これにはビックリした。絶品である。
美味い。旨い。何ともいい味である。
柔らかく塩茹でしてあるだけでピンク色。
脂っこさなんて感じない。臭みも皆無。
サッパリしていて、けど濃厚な味で。
う〜ん、これを食べに来たのだと納得させられた。
アンコウ鍋。
沸騰してから15分ぐらい煮込んでから蓋を取れとのご指示。
フタを開けるとオレンジ色のスープ。
唐辛子でも入れてあるのかと思ったら、昆布出汁に白味噌、
そして肝。
この肝がオレンジ色の元。どうやらタップリと入っているらしい。
この肝から出る旨味と油が旨さを生み出しているようだ。
いやぁ美味かった。
アンコウって魚のアラ(種類じゃなくて頭とか皮とかね)を
せせこましくなくて大胆に食える感じなんだと実感。
魚好きにとっては普通の魚でもアラとかカマとかは御馳走だから
そればっかりの魚って感じのアンコウが不味い訳がない。
ゼラチン質の快感と白身魚の旨味にアンキモの濃厚さが絡まって。。。
最初は見た目より薄味だなぁと思っていたダシが、
のんびり飲んでたせいで、おじやを作る頃には煮詰まってきて、
まぁ濃厚で正直最後はキツかったけどね。
一味唐辛子を貰って風味を変えておじやを楽しんだ。
地酒もスッキリしたいい酒で鮟鱇の濃厚さに良く合う酒だった。
旅館値段で2号瓶1000円だったけど酒はブランドじゃないって見本だね。
翌朝の食事に鯖の味噌煮が出たのはビックリしたなぁ。
凄く美味かったけど珍しいよね。
帰りには土産に「はだかイシモチ」の冷凍を手にして
常磐線に。「はだかイシモチ」ってあまり聞かない魚だけど
どうやら大津港の近海物の名産で、
網の中でウロコが取れちゃうので「はだか」らしい。
ここもまた来ようと思わせてくれた。
やはり漁港は豊かです。
今回もいい道中でいい道楽でした。
------------------------------------------
(天心の湯の直リンクが見あたらないので)
北茨城市観光協会
------------------------------------------
第3回:鮟鱇の七つ道具(茨城県平潟港)
今回の道友:『富久心』純米吟醸(茨城県:合資会社椎名酒造店)
(2003年2月20日に書いた原稿に2005年8月23日に手を加えたモノです)
------------------------------------------
アンコウ鍋は何回も食っていた。
それなりに「美味い」って思ってた。でもフグの方が好き。
関西人だからってのもあるだろうけど「テッチリ」の方が馴染みがある。
でも「肝が食える分だけアンコウが上」とはよく聞くハナシ。
もちろんアンキモなんて飽きる程食っていた。
東京じゃ冬場の居酒屋で置いてない方が珍しいだろう。
居酒屋でも美味い店もある。ポン酢の加減が良い店。
本気で不味い店も有る。油臭いだけの粗雑なアンキモ。
だから平均してみると「大して美味いもんじゃない」となる。
僕もそう思える程には「飽き」ていた。
でも鮮度の良いものなら、違うかも。そう考えていた。
あの「美味しんぼ」の初期の作品で
捕れた漁船の上で処理したアンキモを
「フォアグラより美味い」と評していた。
(あのマンガ自体は功罪正誤色々あるけどね)
なら本場で食ってやろう
・・・大体こんなことで旅に出ることが多いのだが、
それを研究熱心と・・・
だれも言ってくれないだろうから
正直に「食い意地」と、ここは白状することにして、
茨城県平潟港に向かったのである。
上野からの常磐線。「すーぱーひたち」で1時間50分。
ただ下りは2時発が1本、上りは朝夕に2本しか無い。
もちろん鈍行はそれなりに走っているけど、
ほぼ福島との県境なので鈍行で行くには中途半端に遠い。
上野駅2時発で旅に出る。大津港駅で下車。
2月頭のことである。水戸偕楽園の梅林には少し早い。
曇り空でやっぱり少し肌寒いのでまずは立ち寄り湯に。
バスで20分ぐらいのところに
五浦温泉「天心の湯」というのが有る。
この「天心」は美術思想家の岡倉天心である。
岡倉天心は越前藩(福井県)で横浜生まれだが
この辺りを静養先にし、一時は作画活動もしていたので
五浦には分骨された墓もあるそうだ。美術館もある。
ということはさておいて(笑)、
しょせん向かう先は美術館ではなくて日帰り入浴の温泉施設。
別に横山大観の日本画が飾ってあったような記憶はないが、
まとまりのいい源泉利用の温泉であった。
ここにあった「白泥浴」という蛙目石粘土の細粒を溶かした
泥湯(濁ってる程度で、粘ってる訳ではない)は
美容に良いそうで・・・って僕には効能の意味が無いけど
まぁ気持ち良かったね。
そこで小1時間程のんびりしてからタクシーに少し乗る。
ちょうど晩飯の頃合いに宿に到着した。
温泉民宿「相模屋」さん。
入り口には鮟鱇の絵の行灯。
入り口を入ると新日鉄釜石の合宿写真らしいのが飾ってある。
2階の奥の部屋に入れて貰った。床の間もあって綺麗な部屋である。
ここの温泉も循環器を使わない天然温泉だそうだが
なにぶん巨体の身、こぼれるお湯が勿体ない(笑)
というより立ち寄り湯を上がったばかりなのでそのまま夕食を待つことにした。
アンコウ鍋とアンキモ、アンコウの友酢和え、
アンコウの唐揚げ、にプラス基本的夕定食のコース。
「本場のアンコウで満足のいくコースで」と頼んだ。
酒はビールと地酒の『富久心』純米吟醸。
ここの鍋にはアンコウ鍋以外に「どぶ汁」が有る。
「どぶ汁」とは名前は悪いがダシも野菜も使わずに
アンコウの水分と肝だけで作る濃厚な鍋だとかで
まぁ初心者には強烈すぎるかもとアンコウ鍋で遠慮した。
基本的なメニューの中の魚類も美味かった。
その日の刺身盛り合わせは
あいなめ、ほうぼう、すずき、かんぱち、
白身魚の盛り合わせである。
煮付けは「のどぐろ」
富山でよく見かける白身魚の赤ムツである。
考えてみればアンコウだって白身魚か。
白身尽くしである。
さていよいよアンコウ。これを食べに来たのだ。
最初に口にしたのがアンコウの友酢和え。
蒸し上げたアンコウの身と皮を肝を混ぜた酢味噌で食べる。
蒸し物は魚臭さが残るから酢味噌で食べようという訳だが、
友酢になってるのでサッパリした中にも旨味がシッカリ。
アンコウの唐揚げはアンコウの身と皮となすびの唐揚げに
甘辛の汁をかけたもの。ビールに合うね。
アンキモ。これにはビックリした。絶品である。
美味い。旨い。何ともいい味である。
柔らかく塩茹でしてあるだけでピンク色。
脂っこさなんて感じない。臭みも皆無。
サッパリしていて、けど濃厚な味で。
う〜ん、これを食べに来たのだと納得させられた。
アンコウ鍋。
沸騰してから15分ぐらい煮込んでから蓋を取れとのご指示。
フタを開けるとオレンジ色のスープ。
唐辛子でも入れてあるのかと思ったら、昆布出汁に白味噌、
そして肝。
この肝がオレンジ色の元。どうやらタップリと入っているらしい。
この肝から出る旨味と油が旨さを生み出しているようだ。
いやぁ美味かった。
アンコウって魚のアラ(種類じゃなくて頭とか皮とかね)を
せせこましくなくて大胆に食える感じなんだと実感。
魚好きにとっては普通の魚でもアラとかカマとかは御馳走だから
そればっかりの魚って感じのアンコウが不味い訳がない。
ゼラチン質の快感と白身魚の旨味にアンキモの濃厚さが絡まって。。。
最初は見た目より薄味だなぁと思っていたダシが、
のんびり飲んでたせいで、おじやを作る頃には煮詰まってきて、
まぁ濃厚で正直最後はキツかったけどね。
一味唐辛子を貰って風味を変えておじやを楽しんだ。
地酒もスッキリしたいい酒で鮟鱇の濃厚さに良く合う酒だった。
旅館値段で2号瓶1000円だったけど酒はブランドじゃないって見本だね。
翌朝の食事に鯖の味噌煮が出たのはビックリしたなぁ。
凄く美味かったけど珍しいよね。
帰りには土産に「はだかイシモチ」の冷凍を手にして
常磐線に。「はだかイシモチ」ってあまり聞かない魚だけど
どうやら大津港の近海物の名産で、
網の中でウロコが取れちゃうので「はだか」らしい。
ここもまた来ようと思わせてくれた。
やはり漁港は豊かです。
今回もいい道中でいい道楽でした。
------------------------------------------
(天心の湯の直リンクが見あたらないので)
北茨城市観光協会
------------------------------------------
ruminn_master at 2003年02月20日 23:00 【食】道中道楽(水鳥版)第3回原稿より│コメント(0)│トラックバック(0)
Tweet
お寿司・お魚・和食あれこれ | 旅(関東・甲信)

Tweet
お寿司・お魚・和食あれこれ | 旅(関東・甲信)