2005年11月12日
【芸】流石家元、談志の「らくだ」
大ネタである。個人的には「芝浜」以来かな。
最近あんまり大ネタに当たらなかった。
「松を引け」「ん廻し」「首提灯」などなど。
久々に「芸のチカラ」ってのに引きこまれ圧倒された感じ。
導入部分、落語の世界に入り込むところまでは談志自体ウロウロしてたけど
乗ってきた時のパワーはさすが常人ではない。
「芝浜」の時に感じた
「しわがれ声」の談志が色っぽい女房に見える魔術は
「らくだ」では
同じ男の2人の会話、立場の強弱、気の強弱が移り変わる、
酔いの進み具合に応じて形勢が逆転するところが最大の見せ場の噺、
もちろん聴衆は重々承知で待ち構えているネタなのだが
そんな先行きを忘れさせて
談志がある時は「屑屋」、ある時は「ヤクザ」そのものに見える。
空気が変わる。不思議なことに顔も変わる。
談志は自分の回りの空気を作り出す。密度が自在に変わっていく。
聴衆はその「間」に惹き込まれて目の前に居るのが「立川談志」であることを忘れる。
噺の前後に照れて言い訳するのが今の談志の味なんだけど御本人は悔しいらしい。
世間を愚痴る、落語界を愚痴る、今の時代を愚痴る。
そして何より自分自身を愚痴る。
これも今の味だと思う。
立川流家元、立川談志の一人会「秋三夜」の中日が国立演芸場で有った。
10月、11月、12月と有ってその真ん中。
いずれも発売初日一時間も経たずに売り切れのチケットである。
談志オッカケの友人に声を掛けられて取って貰って一緒に行った。
一人会だからもちろん家元一人。二席。
だいたい家元はマクラで客層を探る。
二席やるなら一席目はそれ自体が探りネタだったりしたこともある。
本日の一席目、仲入り前は
「疝気の虫」
イリュージョン系のオモシロ噺。
ほとんど桂枝雀なみに動きまくる。
「これじゃあ枝雀だ!」って言いながら(笑)。
家元のウォーミングアップ。
マクラというか愚痴話で印象に残ったのが
「文明が文化を支えなきゃイケナイ」みたいなハナシ。
家元のウンチクは好きである。
でもって二席目が件の「らくだ」。
仲入り時に友人と
「芝浜」って空気じゃないけど「文七元結」ぐらい場所柄だから・・・
なんて予想してたけど、予想は正面から外してくれた。
「若い頃ならやってたかも知れないが」なんて言いながら。
※以上、落語演目リンク先・・・落語のあらすじ 千字寄席
(落語検索エンジン「ご隠居」よりネタ数こそ少ないけど深いところまで判るのでオススメ)
一緒にすると怒られるけど
しばらく前に東西落語研鑽会で鶴瓶の「らくだ」を聞いた。
師匠の大ネタに挑戦するということで大騒ぎだったけど
「松鶴味」は抜群の鶴瓶、
オチに向かって焦るのは鶴瓶の癖に思うけど
山場の酔っぱらうシーンはそれなりに良かった。
鶴瓶そしてその師匠の松鶴の「らくだ」、
枝雀の「らくだ」、米朝の「らくだ」
この辺りも聞いたことはあって何枚かCDやらビデオも有るが、
頭の中では「らくだ」は上方落語だ。
枝雀以外の上方落語だと「らくだ」のハナシはもう少し先まで進む。
(上方落語なら【世紀末亭】)
オチはかなり先にある長編落語なんだが、実際のところ中だるみは避けられない感じ。
江戸落語でも
談志と同じ場所、
二人の男の立場が逆転した瞬間をオチとする噺家さんが他に居たと思う。
なるほど
火葬場のオチまで進むとワリと駄洒落のような印象になる。
人情の機微、人間の面白さ、なんて深いオチにするには
談志・枝雀の選択は秀逸に思える。
たしかにこの方が好きなんだけど
「そんでそのあとどうなんねん!?」ってのが残るのが少々気色悪かったりする。
ところでこの落語の「らくだ」、元ネタが歌舞伎なんだってね。
眠駱駝物語(ねむるがらくだものがたり)(frompureDROPS41*12)
歌舞伎も見てみたい。
※噺家さんを弟子でも業界人でもないのに「○○師匠」って呼ぶのは
なんだか「通ぶってる」みたいで嫌なので敬称略にしてます。
特に今回は何だか批評めいた書き方だし。
でもね、このハナシ好きだからアレコレ思うこと多いんです。
誰かに失礼だったらスミマセン。
でもねぇ、例えば
みんな普段は「バース」「掛布」な訳で
でもって本人を目の前にすれば「バースさん」「掛布さん」なんで
一般人の身としてはいいんじゃないかと。
あと、芸名・雅号で呼ぶのは十分に敬意を表すもののはずですし、まぁお許しを。
<<訂正追記 at 2005年11月13日 22:33>>
よくよく読んで考えてみると「らくだ」も歌舞伎が後だね。
歌舞伎が落語を元ネタに芝居に仕上げたのかぁ。
「文七元結」の例もあって、
昔は落語が偉かった、っていうより
歌舞伎というのは本来そういう大衆芸能だったんだろうなぁ。
今でこそ何だか「判らなきゃイケナイ」みたいな風潮だけど。
そういうのってJazzもそうだけどクダラナイと思う。
でもってやっぱり歌舞伎の「らくだ」を見たい。
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立川談志 古典落語特選 DVD-BOX
最近あんまり大ネタに当たらなかった。
「松を引け」「ん廻し」「首提灯」などなど。
久々に「芸のチカラ」ってのに引きこまれ圧倒された感じ。
導入部分、落語の世界に入り込むところまでは談志自体ウロウロしてたけど
乗ってきた時のパワーはさすが常人ではない。
「芝浜」の時に感じた
「しわがれ声」の談志が色っぽい女房に見える魔術は
「らくだ」では
同じ男の2人の会話、立場の強弱、気の強弱が移り変わる、
酔いの進み具合に応じて形勢が逆転するところが最大の見せ場の噺、
もちろん聴衆は重々承知で待ち構えているネタなのだが
そんな先行きを忘れさせて
談志がある時は「屑屋」、ある時は「ヤクザ」そのものに見える。
空気が変わる。不思議なことに顔も変わる。
談志は自分の回りの空気を作り出す。密度が自在に変わっていく。
聴衆はその「間」に惹き込まれて目の前に居るのが「立川談志」であることを忘れる。
噺の前後に照れて言い訳するのが今の談志の味なんだけど御本人は悔しいらしい。
世間を愚痴る、落語界を愚痴る、今の時代を愚痴る。
そして何より自分自身を愚痴る。
これも今の味だと思う。
立川流家元、立川談志の一人会「秋三夜」の中日が国立演芸場で有った。
10月、11月、12月と有ってその真ん中。
いずれも発売初日一時間も経たずに売り切れのチケットである。
談志オッカケの友人に声を掛けられて取って貰って一緒に行った。
一人会だからもちろん家元一人。二席。
だいたい家元はマクラで客層を探る。
二席やるなら一席目はそれ自体が探りネタだったりしたこともある。
本日の一席目、仲入り前は
「疝気の虫」
イリュージョン系のオモシロ噺。
ほとんど桂枝雀なみに動きまくる。
「これじゃあ枝雀だ!」って言いながら(笑)。
家元のウォーミングアップ。
マクラというか愚痴話で印象に残ったのが
「文明が文化を支えなきゃイケナイ」みたいなハナシ。
家元のウンチクは好きである。
でもって二席目が件の「らくだ」。
仲入り時に友人と
「芝浜」って空気じゃないけど「文七元結」ぐらい場所柄だから・・・
なんて予想してたけど、予想は正面から外してくれた。
「若い頃ならやってたかも知れないが」なんて言いながら。
※以上、落語演目リンク先・・・落語のあらすじ 千字寄席
(落語検索エンジン「ご隠居」よりネタ数こそ少ないけど深いところまで判るのでオススメ)
一緒にすると怒られるけど
しばらく前に東西落語研鑽会で鶴瓶の「らくだ」を聞いた。
師匠の大ネタに挑戦するということで大騒ぎだったけど
「松鶴味」は抜群の鶴瓶、
オチに向かって焦るのは鶴瓶の癖に思うけど
山場の酔っぱらうシーンはそれなりに良かった。
鶴瓶そしてその師匠の松鶴の「らくだ」、
枝雀の「らくだ」、米朝の「らくだ」
この辺りも聞いたことはあって何枚かCDやらビデオも有るが、
頭の中では「らくだ」は上方落語だ。
枝雀以外の上方落語だと「らくだ」のハナシはもう少し先まで進む。
(上方落語なら【世紀末亭】)
オチはかなり先にある長編落語なんだが、実際のところ中だるみは避けられない感じ。
江戸落語でも
談志と同じ場所、
二人の男の立場が逆転した瞬間をオチとする噺家さんが他に居たと思う。
なるほど
火葬場のオチまで進むとワリと駄洒落のような印象になる。
人情の機微、人間の面白さ、なんて深いオチにするには
談志・枝雀の選択は秀逸に思える。
たしかにこの方が好きなんだけど
「そんでそのあとどうなんねん!?」ってのが残るのが少々気色悪かったりする。
ところでこの落語の「らくだ」、元ネタが歌舞伎なんだってね。
眠駱駝物語(ねむるがらくだものがたり)(frompureDROPS41*12)
歌舞伎も見てみたい。
※噺家さんを弟子でも業界人でもないのに「○○師匠」って呼ぶのは
なんだか「通ぶってる」みたいで嫌なので敬称略にしてます。
特に今回は何だか批評めいた書き方だし。
でもね、このハナシ好きだからアレコレ思うこと多いんです。
誰かに失礼だったらスミマセン。
でもねぇ、例えば
みんな普段は「バース」「掛布」な訳で
でもって本人を目の前にすれば「バースさん」「掛布さん」なんで
一般人の身としてはいいんじゃないかと。
あと、芸名・雅号で呼ぶのは十分に敬意を表すもののはずですし、まぁお許しを。
<<訂正追記 at 2005年11月13日 22:33>>
よくよく読んで考えてみると「らくだ」も歌舞伎が後だね。
歌舞伎が落語を元ネタに芝居に仕上げたのかぁ。
「文七元結」の例もあって、
昔は落語が偉かった、っていうより
歌舞伎というのは本来そういう大衆芸能だったんだろうなぁ。
今でこそ何だか「判らなきゃイケナイ」みたいな風潮だけど。
そういうのってJazzもそうだけどクダラナイと思う。
でもってやっぱり歌舞伎の「らくだ」を見たい。
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