2006年03月18日
【酒】酒蔵「龍力」蔵見学
前々から行きたいと思っていた馴染みの酒、
姫路の蔵「龍力」の蔵見学。
かねてからの知人で次世代を担うであろう蔵元の長男坊が初めて仕込んだ酒を出すという機会を狙っての姫路遠征だ。
普通、酒好きが蔵元見学に行くのは
いわゆる「高級酒」とか「一番イイ酒」を絞る時期を狙って行くことが多い。
しかし今回は違う。
そういう時期は終わってるのだけど
「人生で最初」って機会に関われるのって貴重だ。

東京から青春18切符で西へ向かうときの定番、ムーンライトながら、
旅行好きには定番(★)(★)(★)(★)のこの夜行列車、
俗称大垣行きの接続はショートは米原、ロングは「網干行」が多いからだ。
龍力の蔵の後ろに広がるのがJR西日本の操車場ということで目的地の網干は姫路から西へ数駅、関西近郊快速の西の終着駅だ。

網干駅を降りて線路越しに見渡すと龍力の意匠を掲げた酒造工場の白い建物が目に付く。
訪れた時は小雨模様で、その中を線路沿いに数分歩く。

龍力の蔵元、本田商店の本田家に着いて挨拶もそこそこに蔵の方に向かう。
会議室のようなスペースで一通りの日本酒の工程、龍力の歴史のレクチャーを受けた。
(〜以下の「まとめ」にはそのときの受け売りがだいぶあります(笑)〜)
酒というと灘というのは江戸の昔からの定番イメージ、
(ものの本によると1785年で、江戸市中での灘酒シェアは40%以上、1817年には50%超過、江戸時代末には60%にまで達したという)
灘五郷が近隣に控える地酒の蔵元としては勝負すること自体が大変な苦労だ。
同じ品質のものを「より安く」作るか、大手酒造メーカーよりも「いい酒」を作るか。
酒蔵の創業は大正10年となっているが、戦前戦後の営業形態は酒造メーカーというよりは地元の酒卸販店としての歴史が長い。
しかしさらに元を辿ると元禄時代からの播州杜氏の血を引く杜氏の家柄。
龍力は「いい酒」を作ることを選んだ。
国税庁主催の全国新酒鑑評会(★)(★)で最初の金賞受賞が昭和60年。
米の目が利いたのが幸いして山田錦を生産する特A地区の米を確保。
現在では山田錦をはじめとする米にこだわる蔵元として知る人ぞ知る酒蔵である。
龍力を代表する銘柄「米のささやき」
・大吟醸 米のささやき YK-40-50
・大吟醸 米のささやき YK-35
その中でその生産地区別に
・純米大吟醸 米のささやき 「秋津」
・純米大吟醸 米のささやき 「上三草」
・純米大吟醸 米のささやき 「吉川米田」
また米の種別ごとにも様々ある。
・特別純米 山田錦
・特別純米「雄町」
・特別純米「山田穂」
・特別純米「神力」
・特別純米 五百萬石
この中では「秋津」が一番値段はするが、さすがに抜群に旨い。
![[兵庫県]山田錦の龍力・大吟醸酒・秋津・1.8L](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026391088.jpeg)
個人的には 「吉川米田」も結構好き。
米別だと「山田穂」(山田錦のお母さん)も好きな方だ。

酒造場に入る前に白いゴム長靴に履き替え、頭髪脱落防止のヘッドキャップを被る。
そう見学先は食品工房、微生物の世界、なのである。
作業場に向かって最初に案内されたのが巨大な縦型精米器が並ぶ精米場。
米にこだわる龍力の象徴のような空間に思えた。

食米の精米器と異なり精米過程の米が熱で変質しないように放熱しながら時間を掛けて米を磨く特殊な機械。
大吟醸レベル(精米歩合50%以下、つまり玄米を半分以上削って内側のみ使う)に至るまでにはおよそ1週間ほどかかるという。
そして龍力の精米器は通常の酒造メーカーが米の芯だけを取り出すのと異なって米粒を米粒の形のままに縮小サイズにしていくマニアックさ。
機械の足下には会長が研究中という各地の田圃の土壌標本が並んでいた。
まさに大吟醸の比率の多い龍力ならでは、という象徴的な空間から見学会が始まった。
横に空間を拡げられない都市近郊の酒造工場らしく
工場の中はエレベーターで縦に接続され、いくつもの作業場に分かれていた。
YK35専用のタンク部屋などもあった。
(YK35とは米の芯35%まで磨いた山田錦と熊本酵母で作る大吟醸の代表的カテゴリー)
・大吟醸 米のささやき YK-35
そのためその後の見学会は酒造工程通りとはいかなかったのだが、
ここでは分かりやすく一般的な工程に従って写真を並べ、話を進めてみる。
そうそう、まず前提としてアルコールというのは糖分からしかできない。
お米は食べてるとき口中で噛んでると甘くなるけど、それは唾液の中の消化酵素でデンプンが糖化されたから。
それを吐き出し瓶などに貯めて自然界の酵母でアルコール発酵するのを待ったものが酒の原型。
猿酒がそうだが、人間様だって古代は乙女(未通娘)が噛んでた噛み酒がルーツ。
酒造とは要するにそれを人工的に科学的に衛生的に行うことだ。
さて、収穫して倉庫で寝かせて水分をある程度枯れさせた米を
つまりデンプンを糖分に変えつつ同時にアルコールに変えていく。
同じ醸造酒でも原料が糖分なワインは糖化プロセス不要なので単発酵、
ビールは大麦のデンプンから糖化とアルコール発酵を区切って行う単行複発酵。
蒸留することなく醸造酒として高いアルコール度数を得るのには日本酒の方法がベストという。
酒造の歴史はどれもそれなりに古いのに、日本酒がこんな素晴らしい方法に辿り着いたのは何故だろうね。
不思議なハナシ。

米にこだわった大吟醸の多い蔵元ならではである。
あえてあまり削らずに作った龍力 「祇園」 〜きもと造り〜なども龍力には有るが大吟醸となると米の半分以上は削ってしまう訳だ。
その米の粉は製菓会社などに売られるものだが、龍力では一部焼酎になる。
(普通の米焼酎は酒粕から造るものが多い)
・米焼酎 吟のわけまえ



龍力の工場部分の外壁に昔ながらの煉瓦造り煙突が張り付いている。
その下にあるのが釜場だ。

人のいる場所ではフラッシュをできるだけ炊かない主義なので、歩きながらの片手撮りじゃ室内のはブレてしまった。
だから写真は入り口だけ。
壁面に張り付いた電線みたいなのは電熱線である。
麹室というのは蒸し上がった米を広げるビリヤード台みたいな部屋が一つ。隣にもう一部屋。
感じとしてはちょっと大きめのドライサウナルーム。
ビリヤード台では広げた蒸し米に麹かびの種菌をケーキの粉砂糖みたいに振りかけて付着させる。
そして麹蓋というトレーに小分けされて隣の部屋で米の内部にカビの菌糸が食い込むのを待つ。
いずれにせよここは無風の高温地帯でなければならないので現代的エアコンじゃなくて古典的な電熱線の出番。
麹かびの食い込んだ米のデンプンはその働きで糖化していくことになる。

最初から大量のアルコールを造れというのは酵母には酷なハナシらしい。
そこで小さなタンクから少しずつ大きなタンクにしていく。
その最初の段階。発酵が始まる状態を酒の母「モト」と呼ぶ。

この次の工程も含めて単なる蒸し米を加えるのでなく麹となったものを加えていくのが全麹仕込み。
龍力でいうと「千里馬」だ。
この千里馬は全麹で、なおかつ「きもと造り」。
速醸とは異なって天然の乳酸発酵を待つ古典的な方法。
その作業を「山卸(やまおろし)」、
そのやり方を「きもと造り」と呼ぶのだが、
磨り潰さなくてもいずれ米が溶けて発酵は始まる。
そうして作るのが「山廃」。
清酒酵母によるアルコール発酵は乳酸菌が雑菌を押さえ込んだ環境の中でこそ。
その乳酸菌優位の状況をいかにつくるか。
山廃も含めた「きもと系」の造り方は時間も手間も掛かるし
何よりもスッキリした味わいにはならない。
複雑な旨味や深い味が生まれるとして「きもと系」が好きな人も少なくないが
時代の趨勢は最初から乳酸菌を加えて作る「速醸もと」によるスッキリ系だ。
龍力も中心は「速醸もと」である。
(参考:日立ハイテク科学シンポジウム:第9回 「微生物とバイオテクノロジー」 プレゼンテーション(1):日本酒の比較醸造学)

タンクの中身は大きく酒母と異なるわけではない。
小から大へ、材料を初添・仲添・留添と加えていく3段仕込みが一般的な清酒の育て方。
発酵過程は糖分をアルコールと炭酸ガスに変化させるプロセスだ。

発酵中のタンクを覗き込んだら目眩がしそうな炭酸ガスの強烈さ。
だけどここまでくると部屋の中は、いわゆる「吟醸」の香りがする。
飲むのは吟醸酒じゃないのも好きだけど、この香りは大好きです。
(一時期、この香りがないと眠れない時期もありました(笑))


酒蔵見学の醍醐味、絞りたてを試飲させて貰った。
酒蔵見学は初めてではないけれど
何度経験してもこの舟口(ふなくち)から飲む酒の鮮烈さには市販の瓶詰め酒は勝ちようが無いと思う。
それほどに鮮烈な味と香りなのだ。

ここでモロミは生酒と酒粕に分離される訳だ。


現代では流通が発達してるので酒は生で消費者まで届くことも可能だ。
でも日本酒本来としては2度の加熱殺菌を経るのが本来の姿といえそう。
雑菌を殺し、発酵を止め、香味を保つための「火入れ」。
最初は貯蔵前。そして出荷前にもう1度。
一切加熱しないのが生酒(本生、生々、初絞り、絞りたてなど)、
出荷前に1度だけなのが生貯蔵酒、
最初だけなのが生詰め(夏越しで秋に出すので「冷やおろし」とも言う)。
・大吟醸 米のささやき(生)
・特別純米「山田錦」しぼりたて(生)
・特別純米「雄町」しぼりたて(生)
・特別純米「山田穂」しぼりたて(生)
・特別純米「神力」しぼりたて(生)
・特別純米 しぼりたて
・特別本醸造 蔵出し新酒
・特別純米「山田錦」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「雄町」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「山田穂」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「神力」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「山田錦」ひやおろし(生)
・特別純米「雄町」ひやおろし(生)
・特別純米「山田穂」ひやおろし(生)
・特別純米「神力」ひやおろし(生)
逆に長期間寝かせたものもあって
・長期熟成酒 真古酒(1983年産)
・熟成酒 熟れ酒
たぶん全部飲んで飲み比べたことがありますけど、それぞれに面白いと思います。
冬になると龍力の金と銀、
「金」とは特別純米 しぼりたての1升瓶の包み紙が金色だから、
「銀」とは特別本醸造 蔵出し新酒の1升瓶の包み紙が銀色だから、
これが東京のデパートに届くのが楽しみなのです。
※東京だと、池袋西武と日本橋三越で定期的に試飲販売してますし各種常時在庫があります。

-------------------------
工場見学が終わり、蔵の前で記念写真とか撮って最初の会議室に戻って落ち着いて酒を戴く。
目的の初仕込み酒は「龍仕込」ラベルで今夏に市販されるらしい。
その試飲をさせて貰った。
「まっすぐな」大吟醸という表現が思いついた。
細かい形容表現は何だか嘘っぽくなる気がする。
直球勝負の大吟醸。
だけど香りが強「過ぎる」ことも味が旨「過ぎ」ることも刺激が強「過ぎ」ることもなく、
香りのあるような白身の魚、上等の鯛と合わせても邪魔をすることなく引き立てあうような、
そんなイイ酒だと思った。
いちおう、蔵の現地で飲む酒は感動が鮮烈な分を割り引かないと、
市販されたとき、瓶詰めされ遠隔地まで運ばれてから飲む人にそのままに勧めるのは難しいのだけれど、
たぶん大丈夫だと思う。美味しいよ。
直球が強いんだよね、結局。
---------------
![[兵庫県]山田錦の龍力・酒仙の滴大吟醸酒斗瓶とり(生・冷蔵)1.8L・シマヤ限定酒](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026391100.jpeg)





![[兵庫県]山田錦の龍力・上三草・大吟醸酒・1.8L](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026391092.jpeg)
![[兵庫県] 龍力 酒仙の滴 斗瓶取り大吟醸生酒 1.8L シマヤ限定酒](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026487283.jpeg)
姫路の蔵「龍力」の蔵見学。
かねてからの知人で次世代を担うであろう蔵元の長男坊が初めて仕込んだ酒を出すという機会を狙っての姫路遠征だ。
普通、酒好きが蔵元見学に行くのは
いわゆる「高級酒」とか「一番イイ酒」を絞る時期を狙って行くことが多い。
しかし今回は違う。
そういう時期は終わってるのだけど
「人生で最初」って機会に関われるのって貴重だ。
龍力の蔵元、本田商店の皆様、
特に本田龍佑君と関東営業の久原さんに
とてもお世話になって、
おかげさまで凄く充実した訪問旅行となった。
まずはここで感謝の意を述べさせていただきたい。

1.龍力という蔵元と酒
網干という駅は在来線で東海道を南下する者なら時刻表でよく目にする。東京から青春18切符で西へ向かうときの定番、ムーンライトながら、
旅行好きには定番(★)(★)(★)(★)のこの夜行列車、
俗称大垣行きの接続はショートは米原、ロングは「網干行」が多いからだ。
龍力の蔵の後ろに広がるのがJR西日本の操車場ということで目的地の網干は姫路から西へ数駅、関西近郊快速の西の終着駅だ。

網干駅を降りて線路越しに見渡すと龍力の意匠を掲げた酒造工場の白い建物が目に付く。
訪れた時は小雨模様で、その中を線路沿いに数分歩く。

龍力の蔵元、本田商店の本田家に着いて挨拶もそこそこに蔵の方に向かう。
会議室のようなスペースで一通りの日本酒の工程、龍力の歴史のレクチャーを受けた。
(〜以下の「まとめ」にはそのときの受け売りがだいぶあります(笑)〜)
酒というと灘というのは江戸の昔からの定番イメージ、
(ものの本によると1785年で、江戸市中での灘酒シェアは40%以上、1817年には50%超過、江戸時代末には60%にまで達したという)
灘五郷が近隣に控える地酒の蔵元としては勝負すること自体が大変な苦労だ。
同じ品質のものを「より安く」作るか、大手酒造メーカーよりも「いい酒」を作るか。
酒蔵の創業は大正10年となっているが、戦前戦後の営業形態は酒造メーカーというよりは地元の酒卸販店としての歴史が長い。
しかしさらに元を辿ると元禄時代からの播州杜氏の血を引く杜氏の家柄。
龍力は「いい酒」を作ることを選んだ。
国税庁主催の全国新酒鑑評会(★)(★)で最初の金賞受賞が昭和60年。
米の目が利いたのが幸いして山田錦を生産する特A地区の米を確保。
現在では山田錦をはじめとする米にこだわる蔵元として知る人ぞ知る酒蔵である。
龍力を代表する銘柄「米のささやき」
・大吟醸 米のささやき YK-40-50
・大吟醸 米のささやき YK-35
その中でその生産地区別に
・純米大吟醸 米のささやき 「秋津」
・純米大吟醸 米のささやき 「上三草」
・純米大吟醸 米のささやき 「吉川米田」
また米の種別ごとにも様々ある。
・特別純米 山田錦
・特別純米「雄町」
・特別純米「山田穂」
・特別純米「神力」
・特別純米 五百萬石
この中では「秋津」が一番値段はするが、さすがに抜群に旨い。
![[兵庫県]山田錦の龍力・大吟醸酒・秋津・1.8L](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026391088.jpeg)
個人的には 「吉川米田」も結構好き。
米別だと「山田穂」(山田錦のお母さん)も好きな方だ。

酒造場に入る前に白いゴム長靴に履き替え、頭髪脱落防止のヘッドキャップを被る。
そう見学先は食品工房、微生物の世界、なのである。
作業場に向かって最初に案内されたのが巨大な縦型精米器が並ぶ精米場。
米にこだわる龍力の象徴のような空間に思えた。

食米の精米器と異なり精米過程の米が熱で変質しないように放熱しながら時間を掛けて米を磨く特殊な機械。
大吟醸レベル(精米歩合50%以下、つまり玄米を半分以上削って内側のみ使う)に至るまでにはおよそ1週間ほどかかるという。
そして龍力の精米器は通常の酒造メーカーが米の芯だけを取り出すのと異なって米粒を米粒の形のままに縮小サイズにしていくマニアックさ。
機械の足下には会長が研究中という各地の田圃の土壌標本が並んでいた。
まさに大吟醸の比率の多い龍力ならでは、という象徴的な空間から見学会が始まった。
横に空間を拡げられない都市近郊の酒造工場らしく
工場の中はエレベーターで縦に接続され、いくつもの作業場に分かれていた。
YK35専用のタンク部屋などもあった。
(YK35とは米の芯35%まで磨いた山田錦と熊本酵母で作る大吟醸の代表的カテゴリー)
・大吟醸 米のささやき YK-35
そのためその後の見学会は酒造工程通りとはいかなかったのだが、
ここでは分かりやすく一般的な工程に従って写真を並べ、話を進めてみる。
2.龍力の酒造り
厳密に述べれるほど詳しくないが大ざっぱな日本酒の製造工程は米作りの部分を省くと次のような感じ。そうそう、まず前提としてアルコールというのは糖分からしかできない。
お米は食べてるとき口中で噛んでると甘くなるけど、それは唾液の中の消化酵素でデンプンが糖化されたから。
それを吐き出し瓶などに貯めて自然界の酵母でアルコール発酵するのを待ったものが酒の原型。
猿酒がそうだが、人間様だって古代は乙女(未通娘)が噛んでた噛み酒がルーツ。
酒造とは要するにそれを人工的に科学的に衛生的に行うことだ。
さて、収穫して倉庫で寝かせて水分をある程度枯れさせた米を
- 精米
- 洗米&浸水
- 蒸す→蒸米
- 麹カビで糖化→米麹
- 水と酵母と新たな蒸し米を加えアルコール発酵開始→酒母(もと)
- 水と蒸し米や麹を加えて行って酒を育てていく→モロミ
- 酒を絞る
- 濾過、加熱殺菌、貯蔵、調合、など(商品による)
- 瓶詰めして出荷
つまりデンプンを糖分に変えつつ同時にアルコールに変えていく。
同じ醸造酒でも原料が糖分なワインは糖化プロセス不要なので単発酵、
ビールは大麦のデンプンから糖化とアルコール発酵を区切って行う単行複発酵。
蒸留することなく醸造酒として高いアルコール度数を得るのには日本酒の方法がベストという。
酒造の歴史はどれもそれなりに古いのに、日本酒がこんな素晴らしい方法に辿り着いたのは何故だろうね。
不思議なハナシ。
1.精米

米にこだわった大吟醸の多い蔵元ならではである。
あえてあまり削らずに作った龍力 「祇園」 〜きもと造り〜なども龍力には有るが大吟醸となると米の半分以上は削ってしまう訳だ。
その米の粉は製菓会社などに売られるものだが、龍力では一部焼酎になる。
(普通の米焼酎は酒粕から造るものが多い)
・米焼酎 吟のわけまえ
2.洗米&浸水

3.蒸す→蒸米


龍力の工場部分の外壁に昔ながらの煉瓦造り煙突が張り付いている。
その下にあるのが釜場だ。
4.麹カビで糖化→米麹

人のいる場所ではフラッシュをできるだけ炊かない主義なので、歩きながらの片手撮りじゃ室内のはブレてしまった。
だから写真は入り口だけ。
壁面に張り付いた電線みたいなのは電熱線である。
麹室というのは蒸し上がった米を広げるビリヤード台みたいな部屋が一つ。隣にもう一部屋。
感じとしてはちょっと大きめのドライサウナルーム。
ビリヤード台では広げた蒸し米に麹かびの種菌をケーキの粉砂糖みたいに振りかけて付着させる。
そして麹蓋というトレーに小分けされて隣の部屋で米の内部にカビの菌糸が食い込むのを待つ。
いずれにせよここは無風の高温地帯でなければならないので現代的エアコンじゃなくて古典的な電熱線の出番。
麹かびの食い込んだ米のデンプンはその働きで糖化していくことになる。
5.水と酵母と新たな蒸し米を加えアルコール発酵開始→酒母(もと)

最初から大量のアルコールを造れというのは酵母には酷なハナシらしい。
そこで小さなタンクから少しずつ大きなタンクにしていく。
その最初の段階。発酵が始まる状態を酒の母「モト」と呼ぶ。

この次の工程も含めて単なる蒸し米を加えるのでなく麹となったものを加えていくのが全麹仕込み。
龍力でいうと「千里馬」だ。
この千里馬は全麹で、なおかつ「きもと造り」。
速醸とは異なって天然の乳酸発酵を待つ古典的な方法。
その作業を「山卸(やまおろし)」、
そのやり方を「きもと造り」と呼ぶのだが、
磨り潰さなくてもいずれ米が溶けて発酵は始まる。
そうして作るのが「山廃」。
清酒酵母によるアルコール発酵は乳酸菌が雑菌を押さえ込んだ環境の中でこそ。
その乳酸菌優位の状況をいかにつくるか。
山廃も含めた「きもと系」の造り方は時間も手間も掛かるし
何よりもスッキリした味わいにはならない。
複雑な旨味や深い味が生まれるとして「きもと系」が好きな人も少なくないが
時代の趨勢は最初から乳酸菌を加えて作る「速醸もと」によるスッキリ系だ。
龍力も中心は「速醸もと」である。
(参考:日立ハイテク科学シンポジウム:第9回 「微生物とバイオテクノロジー」 プレゼンテーション(1):日本酒の比較醸造学)
6.酒母に仕込水と蒸米と米麹を加えて行って酒を育てていく→モロミ

タンクの中身は大きく酒母と異なるわけではない。
小から大へ、材料を初添・仲添・留添と加えていく3段仕込みが一般的な清酒の育て方。
発酵過程は糖分をアルコールと炭酸ガスに変化させるプロセスだ。

発酵中のタンクを覗き込んだら目眩がしそうな炭酸ガスの強烈さ。
だけどここまでくると部屋の中は、いわゆる「吟醸」の香りがする。
飲むのは吟醸酒じゃないのも好きだけど、この香りは大好きです。
(一時期、この香りがないと眠れない時期もありました(笑))

7.酒を絞る

酒蔵見学の醍醐味、絞りたてを試飲させて貰った。
酒蔵見学は初めてではないけれど
何度経験してもこの舟口(ふなくち)から飲む酒の鮮烈さには市販の瓶詰め酒は勝ちようが無いと思う。
それほどに鮮烈な味と香りなのだ。

ここでモロミは生酒と酒粕に分離される訳だ。

8.濾過、加熱殺菌、貯蔵、調合、など(商品による)

現代では流通が発達してるので酒は生で消費者まで届くことも可能だ。
でも日本酒本来としては2度の加熱殺菌を経るのが本来の姿といえそう。
雑菌を殺し、発酵を止め、香味を保つための「火入れ」。
最初は貯蔵前。そして出荷前にもう1度。
一切加熱しないのが生酒(本生、生々、初絞り、絞りたてなど)、
出荷前に1度だけなのが生貯蔵酒、
最初だけなのが生詰め(夏越しで秋に出すので「冷やおろし」とも言う)。
・大吟醸 米のささやき(生)
・特別純米「山田錦」しぼりたて(生)
・特別純米「雄町」しぼりたて(生)
・特別純米「山田穂」しぼりたて(生)
・特別純米「神力」しぼりたて(生)
・特別純米 しぼりたて
・特別本醸造 蔵出し新酒
・特別純米「山田錦」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「雄町」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「山田穂」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「神力」無濾過氷温生原酒(生)
・特別純米「山田錦」ひやおろし(生)
・特別純米「雄町」ひやおろし(生)
・特別純米「山田穂」ひやおろし(生)
・特別純米「神力」ひやおろし(生)
逆に長期間寝かせたものもあって
・長期熟成酒 真古酒(1983年産)
・熟成酒 熟れ酒
たぶん全部飲んで飲み比べたことがありますけど、それぞれに面白いと思います。
冬になると龍力の金と銀、
「金」とは特別純米 しぼりたての1升瓶の包み紙が金色だから、
「銀」とは特別本醸造 蔵出し新酒の1升瓶の包み紙が銀色だから、
これが東京のデパートに届くのが楽しみなのです。
※東京だと、池袋西武と日本橋三越で定期的に試飲販売してますし各種常時在庫があります。
9.瓶詰めしてラベルを貼って出荷

-------------------------
工場見学が終わり、蔵の前で記念写真とか撮って最初の会議室に戻って落ち着いて酒を戴く。
目的の初仕込み酒は「龍仕込」ラベルで今夏に市販されるらしい。
その試飲をさせて貰った。
「まっすぐな」大吟醸という表現が思いついた。
細かい形容表現は何だか嘘っぽくなる気がする。
直球勝負の大吟醸。
だけど香りが強「過ぎる」ことも味が旨「過ぎ」ることも刺激が強「過ぎ」ることもなく、
香りのあるような白身の魚、上等の鯛と合わせても邪魔をすることなく引き立てあうような、
そんなイイ酒だと思った。
いちおう、蔵の現地で飲む酒は感動が鮮烈な分を割り引かないと、
市販されたとき、瓶詰めされ遠隔地まで運ばれてから飲む人にそのままに勧めるのは難しいのだけれど、
たぶん大丈夫だと思う。美味しいよ。
直球が強いんだよね、結局。
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![[兵庫県]山田錦の龍力・酒仙の滴大吟醸酒斗瓶とり(生・冷蔵)1.8L・シマヤ限定酒](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026391100.jpeg)





![[兵庫県]山田錦の龍力・上三草・大吟醸酒・1.8L](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026391092.jpeg)
![[兵庫県] 龍力 酒仙の滴 斗瓶取り大吟醸生酒 1.8L シマヤ限定酒](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/jizakenoshimaya/img128/img1026487283.jpeg)
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コメント一覧
1. Posted by ろーじー 2006年05月21日 20:24
はじめまして。
龍力フリーク発見〜♪
うれしくてTBさせていただいちゃいました!
龍力はいつもどこで買ってらっしゃるんだろう?とか
銀座界隈のお店情報とか、
気になるポイント盛りだくさんなので
これからしょっちゅう覗かせていただいてもいいですか?
龍力フリーク発見〜♪
うれしくてTBさせていただいちゃいました!
龍力はいつもどこで買ってらっしゃるんだろう?とか
銀座界隈のお店情報とか、
気になるポイント盛りだくさんなので
これからしょっちゅう覗かせていただいてもいいですか?
2. Posted by るみん 2006年05月21日 21:16
どうもどうも。
僕もイケセイ派ですよ。
『銀の星』ってアタゴオル・ヨネザァドみたいな名前ですね。
よろしくです。
僕もイケセイ派ですよ。
『銀の星』ってアタゴオル・ヨネザァドみたいな名前ですね。
よろしくです。
3. Posted by ろーじー 2006年06月03日 20:11
どうもー♪
ここしばらく精神的に死ぬような思いしてたもんでのぞきに来るのがちょっと遅れました。ごめんなさい。
そーですか、イケセイ派ですか!
じゃあ、これまでのどっかですれ違ってるかもですね。
久原さんと龍ぼんには「ろーじー」でなく「ねこさん」と覚えていただいてると思います。
>『銀の星』ってアタゴオル・ヨネザァドみたいな名前ですね。
あ、やっぱわかります?(笑)
リスペクトしてますんで。
「たける」のモデルはテンプラで、
「はやと」のモデルはタクマですから(笑)
ここしばらく精神的に死ぬような思いしてたもんでのぞきに来るのがちょっと遅れました。ごめんなさい。
そーですか、イケセイ派ですか!
じゃあ、これまでのどっかですれ違ってるかもですね。
久原さんと龍ぼんには「ろーじー」でなく「ねこさん」と覚えていただいてると思います。
>『銀の星』ってアタゴオル・ヨネザァドみたいな名前ですね。
あ、やっぱわかります?(笑)
リスペクトしてますんで。
「たける」のモデルはテンプラで、
「はやと」のモデルはタクマですから(笑)
4. Posted by るみん 2006年06月03日 23:19
作者のますむらひろしさんは
(何度か野田のイベントで見てますが)
酒場の親父をヒデヨシ体型にしたような人で
ファンタジーが破れそうですが(笑)。
あ、人のことを言える体型じゃなかった!(笑)。
(何度か野田のイベントで見てますが)
酒場の親父をヒデヨシ体型にしたような人で
ファンタジーが破れそうですが(笑)。
あ、人のことを言える体型じゃなかった!(笑)。
5. Posted by ろーじー 2006年06月03日 23:54
いいです、こっちも人の体型を取り沙汰できたような体型じゃありませんし(爆)
しかし、ますむら氏には会わずにおいた方がよさそうではあるかな(^_^;)
しかしいまだに野田に住んでんのか・・・
作風としては最近のものより、昔のちょっとグロかった時代のほうが好きだなぁ。
私の書くものは、あの世界から毒気を抜いたような、わりとのんびりしたものばっかりですけど。
しかし、ますむら氏には会わずにおいた方がよさそうではあるかな(^_^;)
しかしいまだに野田に住んでんのか・・・
作風としては最近のものより、昔のちょっとグロかった時代のほうが好きだなぁ。
私の書くものは、あの世界から毒気を抜いたような、わりとのんびりしたものばっかりですけど。