2007年08月24日

【酒】ホワイトナイルとブルーナイル 4

早稲田大学と京都大学が組んで古代エジプトビールを「開発」した。

ナイルビール01


「開発」であって「再現」では無いのは以下の経緯による。


最初の発表は2006年4月。1年半程前になる。

何故か早稲田の方の発表が見あたらないので(理由は何となく想像は付くけど(笑))、京都大学のプレスリリースより。
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◆2006年4月10日

早稲田大学と連携協力に関する基本協定を締結

 京都大学はこのたび、早稲田大学と教育や学生の諸活動、研究など多岐にわたって連携協力していくことに合意し、基本協定を締結しました。

 京都大学では、2005年9月に京都市立芸術大学と大学間交流に関する覚書を交わしていますが、私立大学との包括協定は初めてです。

 早稲田大学とは、これまでから部局レベルや学生間での連携がありましたが、今回の協定により、共同ゼミやボランティア活動、両大学の持つ海外ネットワークを活かした情報提供など、より積極的な連携が期待されます。

 なお、本日は協定による成果第一号として、古代エジプトビールが発表されました。このビールは単なるブランド商品ではなく、両大学の知の出会いの成果をモノの形で社会に還元する試みです。12日から京都大学生協や京大会館、ラ・トゥールなどでお楽しみいただけます。
http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2006.htm#200604101916570190
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共同ブランドビールについて

1.概要
  京都大学と早稲田大学はこのたび共同ブランドビールを開発しました。同ビールは黄桜酒造株式会社が製造し、早大と京大の生活協同組合や学内レストラン等のほか、黄桜酒造の直営店で販売されます。発売は2006年4月12日で、商品スペックは次のとおりです。

商品名 ホワイトナイル
容量 330ミリリットル(小瓶)
価格 450円/本(メーカー希望小売価格、税込み)物販店の場合
2.経緯
  エジプト考古学の権威である早稲田大学の吉村作治教授はある企業(ビールメーカー)との共同研究において、壁画をもとにあらゆる考古学的分析を駆使し、古代エジプトビールを再現することに成功されました。その際、古代エジプトでビール醸造に使用されていた「エンマー小麦」の種子を提供したのが京都大学農学研究科栽培植物起源学研究室でした。文化勲章受賞の世界的遺伝学者である木原均教授(1893〜1986)が創設し、現在も活発な活動を続けるこの研究室は、世界中から収集した小麦種子約1万種を更新保存していました。エンマー小麦はエチオピアでの収集以来、40年近い時を経て上記企業が栽培することになり、こうして2004年にエンマー小麦を使用した古代エジプトビールができあがりました。
  公表されたこの成果を大学の知の社会還元として世に提供したいと考えたのが京都大学の尾池和夫総長でした。そして早稲田大学の白井克彦総長に呼びかけたところ、両大学で共同ブランドビールを開発する計画がまとまりました。京都大学は伏木亨農学研究科教授を代表とする研究チームを発足させ、「古代種小麦を使用した美味な現代ビール」という商品コンセプトをまとめました。そして、黄桜酒造株式会社の協力を得てこれを試作した結果、2005年12月、エンマー小麦近縁のデュラム小麦を麦芽・小麦総量の20%用いることで独特の風味を醸し出す現代ビール「ホワイトナイル」が開発されました。
  本ビールは単なるブランド商品ではなく、両大学の知の出会いの成果をモノの形で社会還元する試みです。また、「古代エジプト文明の知恵が京都の水を機に現代に甦ることには文明史的意義があります」(京大尾池総長談)。エンマー小麦は現在、京都大学農学研究科附属農場において種子生産中で、その後黄桜酒造の契約農場で本格生産に入ります。このため同小麦入り「ホワイトナイル」の発売は2007年夏になりますが、それに先駆けて今回はデュラム小麦入り「ホワイトナイル」を先行発売いたします。
http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/0604410_11.htm
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上記引用の中の「経緯」の部分にこうある。

「エジプト考古学の権威である早稲田大学の吉村作治教授はある企業(ビールメーカー)との共同研究において、壁画をもとにあらゆる考古学的分析を駆使し、古代エジプトビールを再現することに成功されました。」

ここでいう「ビールメーカー」は先日生麦工場の見学に訪れた折にも展示スペースが有った(時間が無くて見れなかった)が、キリンビール(リンク先は「古代エジプトビール研究所」という特集頁)のことだ。

そしてコスト面から製品化が一旦は挫折したのだけれど、京都大学の植物遺伝学研究者の熱意と黄桜酒造の協力で、古代エジプト小麦の近縁種であるデュラム小麦を使って最初に製品化されたのが2006年4月版の「初代ホワイトナイル」である。
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  エジプト考古学の権威である早稲田大学の吉村作治教授はある企業(ビールメーカー)との共同研究において、壁画をもとにあらゆる考古学的分析を駆使し、古代エジプトビールを再現することに成功されました。その際、古代エジプトでビール醸造に使用されていた「エンマー小麦」の種子を提供したのが京都大学農学研究科栽培植物起源学研究室でした。文化勲章受賞の世界的遺伝学者である木原均教授(1893〜1986)が創設し、現在も活発な活動を続けるこの研究室は、世界中から収集した小麦種子約1万種を更新保存していました。エンマー小麦はエチオピアでの収集以来、40年近い時を経て上記企業が栽培することになり、こうして2004年にエンマー小麦を使用した古代エジプトビールができあがりました。

 公表されたこの成果を大学の知の社会還元として世に提供したいと考えたのが京都大学の尾池和夫総長でした。そして早稲田大学の白井克彦総長に呼びかけたところ、両大学で共同ブランドビールを開発する計画がまとまりました。京都大学は伏木亨農学研究科教授を代表とする研究チームを発足させ、「古代種小麦を使用した美味な現代ビール」という商品コンセプトをまとめました。そして、黄桜酒造株式会社の協力を得てこれを試作した結果、2005年12月、エンマー小麦近縁のデュラム小麦を麦芽・小麦総量の20%用いることで独特の風味を醸し出す現代ビール「ホワイトナイル」が開発されました。

  本ビールは単なるブランド商品ではなく、両大学の知の出会いの成果をモノの形で社会還元する試みです。また、「古代エジプト文明の知恵が京都の水を機に現代に甦ることには文明史的意義があります」(京大尾池総長談)。エンマー小麦は現在、京都大学農学研究科附属農場において種子生産中で、その後黄桜酒造の契約農場で本格生産に入ります。このため同小麦入り「ホワイトナイル」の発売は2007年夏になりますが、それに先駆けて今回はデュラム小麦入り「ホワイトナイル」を先行発売いたします。

 早稲田大学のエジプト考古学と京都大学の植物遺伝学。二つの知の出会いで再現された古代エジプト文明の知恵。京都の地下水で現代に甦った風味を心ゆくまでお楽しみください。
http://www.s-coop.net/goods/whitenile/index.htm(京大生協)
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そして上記2つの引用文にも有るように、この7月にようやく古代エジプト小麦である「エンマー小麦」での商品化が可能となって目標としていた古代エジプトビールが商品化された。
 それが当代「ホワイトナイル」である。
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吉村先生も太鼓判!4000年のロマン味“復刻”エジプトビール

8月5日20時21分配信 産経新聞

 約4000年前のエジプトで飲まれていた古代ビールの“復刻版”が今月中旬、いよいよ販売されることになった。黄桜(京都市伏見区)と京都大、早稲田大が共同開発した「ホワイトナイル」で、これまでは通常の小麦を使って「古代風」の商品を販売していたが、当時の原料とされる小麦の量産に成功。商品化にこぎ着けた。製法は現在のままだが、関係者は「古代のロマンと味わいを堪能してほしい」と話している。

 古代エジプトのビールをめぐっては、平成16年、エジプト考古学の権威で元早大教授の吉村作治・サイバー大学長らが壁画を分析し、古代製法を再現。この時は、高コストなどの理由から商品化は見送られた。
 しかし、京大と早大が引き続き古代ビールの“復刻”を検討。約1万種の小麦を収集、保存している京大が、古代エジプトでアルコール飲料の原料に用いられていた「エンマー小麦」の種子を黄桜に提供し、17年秋から京大付属農場(大阪府高槻市)で量産体制へ向けた試行錯誤が続けられた。

 栽培ノウハウなどもなかったが苦労の末に今年6月、1.2トンの収穫に成功。この間、同社は近縁種の「デュラム小麦」で代用したホワイトナイルを販売していたが、「やはり“本物”の味を」と、リニューアルを決めた。「深く静かな味わいと、優しく丸い口当たりが、さらに際立ちました」(同社)。京大付属農場長の山田利昭教授も「収穫の少ない野生種でつくっており、古代へのロマンを感じてほしい」と話している。
 京大、早大の生協や黄桜直営店、京都や大阪の百貨店などで販売される。330ミリリットル入り450円。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070805-00000913-san-bus_all
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そして8月20日の京大プレスリリースで発売日が同月23日と発表された。
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早稲田大学=京都大学=黄桜共同開発ビール「ホワイトナイル」のリニューアルと発泡酒「ブルーナイル」発売について

2007年8月20日

 京都大学、早稲田大学、黄桜株式会社

 京都大学と早稲田大学は昨年4月、黄桜株式会社とビール「ホワイトナイル」を共同開発したことを発表しました。同ビールは黄桜から発売され、大好評を博してまいりましたが、材料をデュラム小麦からエンマー小麦に変更するリニューアルを8月23日に行ないます。また、新規開発したフレーバー系発泡酒「ブルーナイル」も同日、黄桜から販売開始されることになりました。


「ホワイトナイル」のリニューアルと発泡酒「ブルーナイル」について

1.「ホワイトナイル」のリニューアル
 「ホワイトナイル」はエンマー小麦(紀元前8000年ごろ以降に栽培化)による「古代エジプトビール」の再現プロジェクトに端を発しつつ、同じ材料を用いた現代ビールとして開発されましたが、2006年4月発売の製品では近縁のデュラム小麦(紀元前1000年ごろから栽培化)を用いました。
 その後、エンマー小麦の栽培に努めるとともに(2007年6月に1.2トン収穫)、エンマー小麦使用のホワイトナイルの開発を進めたところ、エンマー小麦を65%まで精麦することにより、ホワイトナイル独特の風味を継承するとともに、いっそうまろやかな飲み口を実現できることがわかりました。よって、2007年8月23日をもってホワイトナイルをリニューアルいたします。商品名やラベルデザインは現行製品を継承する方針です。

2.発泡酒「ブルーナイル」の導入
 ホワイトナイルのリニューアルと同時に、姉妹品としてフレーバー系発泡酒「ブルーナイル」を導入します。特徴は次のとおりです。

エンマー小麦収穫量変動への対応として、市場で入手できるデュラム小麦を使用します。
副材料として使用する素材はミカン科の「ゆず」とセリ科の「コリアンダー」です。これにより、独特の風味をかもしだした発泡酒となります。
風味に関わる副材料を添加するため自動的に発泡酒となりますが、麦芽使用率はホワイトナイルとほとんど同じで生産コスト、税額ともに変わらず、一方で古代エジプトとの関連性およびテイストデザインの点で付加価値が高いため、ホワイトナイルと同じ価格とします。
 「ゆず」は東アジア原産で、特に日本で栽培されています。その果汁は日本料理等で香味、酸味を加える調味料として用いられ、独特の爽やかな香りもあります。「コリアンダー」は地中海東部が原産で、葉、茎、果実に特有の芳香があり、世界各地で香辛料として用いられます。このような意味で「ゆず」と「コリアンダー」は日本文化と地中海文化のシンボルであり、いわばその両者が融合することによって、ブルーナイルの新しい風味が成立しています。
 ブルーナイルのラベルデザインはホワイトナイルの「緑」に対してブルーナイルは「青」を基調とし、また意匠として用いた「ウジャトの眼」(エジプトでは古代神話にちなんで護符として広く受け入れられている)もホワイトナイルの左目(太陽を象徴)に対してブルーナイルは右目(月を象徴)にし、もって一体感を与えます。

【ご注意】
  ホワイトナイルは「古代エジプトビール」を再現、復刻したものではありません。あくまで材料の一部を共通にする現代ビールです。一方、ブルーナイルは新しいタイプの発泡酒です。

【問合せ先】
  京都大学 産官学連携センター教授 澤田 芳郎

   TEL ******(引用に当たり省略)
   E-mail *****(引用に当たり省略)

朝日新聞(8月21日 12面)、京都新聞(8月21日 28面)、産経新聞(8月22日 25面)、日刊工業新聞(8月21日 20面)、日本経済新聞(8月21日 39面)、毎日新聞(8月21日 27面)及び読売新聞(8月21日 39面)に掲載されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070820_1.htm
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それで今日買ってきました。

ホワイトナイル&ブルーナイル
黄桜酒造製品HP

ナイルビール01

どちらも450円
大学の近くの酒屋(野田屋酒店)で買ってきた。

まずはホワイトナイル

ホワイトナイル01
ホワイトナイル02
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紀元前8000年ごろ以降、古代エジプトで栽培されるようになった「エンマー小麦」を現代によみがえらせ、麦芽とともに京都の名水・伏水で仕込んだ現代ビール”WHITE NILE”。悠久の時の流れを”肴”に、たおやかな風味をじっくりとお楽しみください。
参考小売価格 429円(税別) 原材料:麦芽・ホップ・エンマー小麦
アルコール分:5% 内容量:330ml
注意:本品がにごっているのは、風味を大切にした緩やかなろ過により酵母が生きているためです。
http://www.kizakura.co.jp/news/w_nile.htm(黄桜酒造製品紹介Pより)
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ホワイトナイル03


地ビール・クラフトビールの系統としてはスッキリ・サッパリしているね。
 独特の苦みが喉の奥の方で感じられるけど、辛みにも似た切れ味が有って「苦み」とか「辛み」などという表現を裏切る程に飲み易い感じ。
 少なくとも「料理の邪魔をしない」クラフトビールとして料理屋で使えると思うし、「他には無い」風味を出せた、しかも歴とした「ビール」である点でポイントは高いと思う。
 おそらく普及のネックとなるのは450円という値段だろうけど、まぁ上に引用したとおり大変な苦労の果ての産物なのだから、有り難みというか「ハナシの種」。
 常飲までは無理でも時々は手を出したいなと思います。

続いてブルーナイル

ブルーナイル01
ブルーナイル02

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紀元前1000年ごろから古代エジプトで栽培されるようになった「デュラム小麦」(エンマー小麦の近縁種)と麦芽を主原料に使用し、東アジア原産で特に日本で広く栽培されている「ゆず」と、地中海東部原産で世界各地で香辛料として使われている「コリアンダー」を副原料として醸された発泡酒”BLUE NILE”。古代エジプト、地中海、そして日本という三つの文明がつくりだす華やかでさわやかな香りと味をお楽しみください。
参考小売価格 429円(税別) 原材料:麦芽(麦芽使用率78%以上)・ホップ・デュラム小麦・ゆず・コリアンダー
アルコール分:5% 内容量:330ml
注意:本品がにごっているのは、風味を大切にした緩やかなろ過により酵母が生きているためです。
http://www.kizakura.co.jp/news/w_nile.htm(黄桜酒造製品紹介Pより)
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ブルーナイル03


こっちの方が料理を考えずに単品として飲めば美味しいか。

上記引用の成分表示を見てビール好きなら判る人も多いでしょうが、ベルジャンスタイルのホワイトビールです。
 だから一番有名なヒューガルデン・ホワイトと較べることになりますが、一言で言えば
「切れのいい和風ヒューガルデン・ホワイト」
かな。

ヒューガルデンは独特の甘諄さを感じるときが有るけど、それが無くてやはりスッキリ・サッパリ系にまとまってます。
 まぁ対抗するにはヒューガルデンホワイトは400円ぐらいで買えるから、やっぱり50円ぐらい高いところがネックになるかもね。

でもこのいずれの「新生エジプトビール」も上出来に思います。


ちなみにこんな大学色の強いビールを飲むとなると、やっぱり栓抜きもそれなりに。

早稲田栓抜き01
早稲田栓抜き02

早稲田大学応援部稲門会がノリで作ったらしい(行きつけの飲み屋「源兵衛」で買わされた(笑))愛校精神の溢れた品。

早稲田栓抜き03
早稲田栓抜き04

栓を抜くたびに

♪♪♪都の西北、早稲田早稲田、早稲田早稲田、早稲田早稲田早稲田〜♪♪♪

って流れます。

1回は良いけどだんだんウルサイ(笑)。

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エジプト学夜話
古代エジプトを知る事典
ナイルのほとりの物語―古代エジプト遺跡紀行
古代エジプト入門 (「知」のビジュアル百科)
ファラオの食卓―古代エジプト食物語
吉村作治の古代エジプト講義録〈上〉
吉村作治の古代エジプト講義録〈下〉



ruminn_master at 2007年08月24日 18:15 【酒】ホワイトナイルとブルーナイルコメント(0)トラックバック(0)  このエントリーをはてなブックマークに追加


お酒のハナシ | 早稲田〜馬場界隈

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