2008年07月21日
【楽】大銀座落語祭グランドフィナーレ
ほぼ全てのイベントがチケット完売となった後で追加講演のような形で売り出された「大銀座落語祭」の千秋楽、5年続いたこのイベントも今年でひとまず一区切りということで、その千秋楽でもありました。
まぁ素人歌舞伎のアラは割り引くとして(笑)も、場所は「グランドフィナーレ」に相応しく檜舞台の新橋演舞場、最後を飾るどの落語も充実していて、千秋楽に似つかわしい華やかな会だったと思います。



第1部 歌舞伎十八番「勧進帳」
(※指導: 坂東三津五郎丈)
笑いも何も一切無し、単に役者が噺家さんだというだけの真面目な歌舞伎の一幕です。
何と言っても本職でない噺家さんが、新橋演舞場の檜舞台で松羽目物の「勧進帳」、それを本物の囃子方、三味線・長唄が五丁五枚、小鼓三調、大鼓一丁、笛一挺に陰囃子と豪華な本寸法の演出でやらせて貰うんだから凄い「道楽」(笑)ですな。
小米朝は以前からの芝居噺の上手い印象の通りに声も通るし踊りも腰が据わってて「あ、こりゃキッチリ習ったこと有るな」と思ったけど、正蔵は慣れない芝居に無理矢理声を張り過ぎたのか声を潰してしまってるし全く腰が据わってない。弁慶なのに見せ場の六方も「それらしく」踏めてない。う〜ん。。。チャンと下積みしてませんな。。。
踊りにしても武術にしても、まぁ日本○○なんて芸事はおしなべて「普通に歩くこと」が一番難しいということを理屈の判った方々は仰います。
という訳で(笑)、まぁ素人歌舞伎、役者となった噺家さん達の大半は歩き姿が何となく貧乏臭い、単純に言えば「様になってない」のでした。
同行のウチの親も小米朝は感心してたけど、トータルの印象は一言「豪華な学芸会」(笑)。
ま、祝い事ということで。たしかに華やかな気分になれました。
第2部 「桂三枝・笑福亭鶴瓶 二人会 」
看板の二人は上方落語協会の会長(四期目かな?)と副会長、吉本系と松竹系、上方落語の牽引車の揃い踏みというところ。
共演、先に上がる金時さんは三遊亭金馬師匠の長男、仲入り後に上がる花緑さんは人間国宝、5代目柳家小さんの孫、6代目柳家小さんは叔父、ということでいずれも江戸落語のサラブレッド。
今回の大銀座落語祭のテーマが「落語の明日」ということで、たしかにグランドフィナーレに相応しい顔ぶれかと思います。
・三遊亭金時 「紙屑屋」
このハナシは演者によって演出も色々、上方落語だと「浮かれの屑より」、その上方落語の方は前回の東西落語研鑽会でしたか染丸師匠がやってましたが、またそれとは違う江戸の味わい、金時さんのもなかなか面白い。長唄・小唄に都々逸と芸の幅が試されるネタですな。
・笑福亭鶴瓶 「死神」
以前に東西落語研鑽会にかけた鶴瓶版「死神」の再演ですが演出をかなり捻って来ましたね。
以前のもかなり良かったように思うのですが ( 泰葉さんのブログの2007/09/07 記事でも評価されてますな。この当時はまだ小朝夫人だった訳ですが )、御本人は納得されてなかったそうで、どうやら無駄を省いたのと筋を分かり易く練り直した感じです。
でもなぁ、、、一点引っ掛かるかな。。。
少々のネタバレとなりますが、更なる改良を欲して敢えて、サゲを割らない程度に言うとすれば、何が違うって鍵となる死神が幼馴染みの女だってのが一番の違いなんですが、彼女の子供時代のアダ名が「バケモノ」なんですね。これは2年前に初めて聴いた時には無かった設定でした。
どうやら身体が大きくて力持ちだった女の子、そりゃ子供の頃のアダ名ですから「村一番の美人」であっても「バケモノ」って言われるかも知れません。本名「おあき」の設定は和田アキ子さんイメージでしょうか(笑)。
しかし死神ですから一般名称としてもモノノケ、妖怪、つまり「バケモノ」な訳で、そのイメージに引きずられて感情移入が少し邪魔される感じです。観客も彼女を好きになる程でないと上手く落ちない感じの筋書きなのですが、その「バケモノ」って言葉の持つ強い響きに、その度にギクッとさせられる、その存在を遠ざけたく思えてしまう。
前回の感想で自分は以下のように書いてます。
今回はさらにサゲを一捻りしてあり、その点は上手い工夫だと思えただけに、先の「バケモノ」ゆえに遠ざけたくなる気持ちが少々残念でした。
それでも「イイ噺」ですけどね、鶴瓶版「死神」。
〈仲入り〉
・柳家 花緑 「不動坊」
これも色んな演者で聞いた噺ですが、これが江戸落語のカタチなのか花緑さん独特なのか、単刀直入に「打ち合わせ」シーンに入り、嫁を貰う経緯やそれに浮かれる部分をアッサリとした説明で済ます今回のような演出も山場が分散しなくて正解に思います。元々のサゲらしい「幽霊稼ぎ人」と「遊芸稼ぎ人」の洒落オチは現代じゃ通じませんので、今回も別のサゲが作られてました。
・桂 三枝 「誕生日」
桂三枝さんはいつも通りに古典ではなく独自の創作落語ですが、この噺は何度か聴いています。そうして考えてみると、古典も創作も大きな違いは無いですね。古典だって演者が歴史の中で工夫を積み重ねて伝承されているものだし、創作落語といえども演ずる度に工夫され、いずれ佳作は後世に残るのでしょうから。
噺自体、よくできたハナシで面白いですが、三枝師匠は間が抜群だと思うのです。マクラとネタの繋ぎ目も極く自然で、スムーズにハナシに惹き込まれて行きますし。
落語の4席はどれも聞き応えあって、さすが千秋楽に相応しい。
全ての演目が終わり、一度幕が下りたところで再び幕が上がり、グランドフィナーレらしく本日の主な出演者に加えて、別会場に居た人も駆けつけての「六人の会」勢揃いなご挨拶。
そのヤリトリも贅沢な演芸という感じでした。
「大銀座落語祭」がひとまず終わるその挨拶。
そして昔テレビ(徹子の部屋?)でしたか小朝さんが「この落語祭を将来は全国各地でやりたい」と言っていたのをまさしく実現する第1弾として、来年の告知。
暗転した会場、ステージ上のスクリーンに大写しになったのは東国原宮崎県知事。
どうやら来年10月の連休を使って宮崎大落語祭だそう。
旅立ちですな。
最後は関東三本締めで「お開き」。

いつもの東西落語の倍もしたけど、さすが面白いイベントでした。
まぁ素人歌舞伎のアラは割り引くとして(笑)も、場所は「グランドフィナーレ」に相応しく檜舞台の新橋演舞場、最後を飾るどの落語も充実していて、千秋楽に似つかわしい華やかな会だったと思います。


お待たせいたしました!「大銀座落語祭2008」今年も開催いたします!
2004年の開始以来、毎年初夏の銀座に笑いの渦を巻き起こしてきた大銀座落語祭。
本年ももちろん開催いたします。
5回目を迎える本年は、これまでの集大成として『落語の明日』をテーマに、できる限りたくさんの、次代を担う若手噺家を皆様にご紹介いたします。本年でファイナルとなる「大銀座落語祭」に是非ご来場ください。
気になる日程は2008年7月17日(木)〜7月21日(月・祝)の5日間。
銀座ブロッサム中央会館(7月18日〜20日)、新橋演舞場(7月21日)、時事通信ホール、博品館劇場、JUJIYA、よみうりホール(7月21日)、銀座小劇場、銀座みゆき館劇場、教文館ウェンライトホール他で開催されます。
日程 2008年7月17日(木)・18日(金)・19日(土)・20日(日)・21日(月・祝)
主催 大銀座落語祭実行委員会
六人の会
全銀座会/銀座通連合会/西銀座通会
支援 文化庁、中央区
7月17日(木)〜21日(月・祝)大銀座落語祭2008
http://www.ginza.jp/select/event/rakugo/
大銀座落語祭2008グランドフィナーレ
会場:新橋演舞場
銀座6-18-2 03-3541-2600
7月21日(月・祝) 18:00開演(17:30開場)
第1部 『勧進帳』
配役
武蔵防弁慶:林家正蔵
源義経:林家いっ平
亀井六郎:春風亭一之輔
片岡八郎:林家たけ平
駿河次郎:古今亭菊六
常陸坊海尊:入船亭扇遊
番卒一:柳亭小燕枝
番卒ニ:柳家小里ん
番卒三:林家錦平
太刀持:林家小ぶた
富樫左衛門:桂小米朝
第2部 「桂三枝・笑福亭鶴瓶 二人会 」
(出演順)
三遊亭金時
笑福亭鶴瓶
〈仲入り〉
柳家花録
桂三枝
全席指定
料金:
一等席(一階席と二階席の一部の席)7,350円(税込)
二等席(二階席一部と三階席)5,250円(税込)
Pコード:387-375
http://www.ginza.jp/select/event/rakugo/?page_id=53
http://www.ginza.jp/select/event/rakugo/?p=60
終わりました、大銀座落語祭
春風亭小朝公式サイト
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第1部 歌舞伎十八番「勧進帳」
(※指導: 坂東三津五郎丈)
笑いも何も一切無し、単に役者が噺家さんだというだけの真面目な歌舞伎の一幕です。
何と言っても本職でない噺家さんが、新橋演舞場の檜舞台で松羽目物の「勧進帳」、それを本物の囃子方、三味線・長唄が五丁五枚、小鼓三調、大鼓一丁、笛一挺に陰囃子と豪華な本寸法の演出でやらせて貰うんだから凄い「道楽」(笑)ですな。
小米朝は以前からの芝居噺の上手い印象の通りに声も通るし踊りも腰が据わってて「あ、こりゃキッチリ習ったこと有るな」と思ったけど、正蔵は慣れない芝居に無理矢理声を張り過ぎたのか声を潰してしまってるし全く腰が据わってない。弁慶なのに見せ場の六方も「それらしく」踏めてない。う〜ん。。。チャンと下積みしてませんな。。。
踊りにしても武術にしても、まぁ日本○○なんて芸事はおしなべて「普通に歩くこと」が一番難しいということを理屈の判った方々は仰います。
という訳で(笑)、まぁ素人歌舞伎、役者となった噺家さん達の大半は歩き姿が何となく貧乏臭い、単純に言えば「様になってない」のでした。
同行のウチの親も小米朝は感心してたけど、トータルの印象は一言「豪華な学芸会」(笑)。
ま、祝い事ということで。たしかに華やかな気分になれました。
第2部 「桂三枝・笑福亭鶴瓶 二人会 」
看板の二人は上方落語協会の会長(四期目かな?)と副会長、吉本系と松竹系、上方落語の牽引車の揃い踏みというところ。
共演、先に上がる金時さんは三遊亭金馬師匠の長男、仲入り後に上がる花緑さんは人間国宝、5代目柳家小さんの孫、6代目柳家小さんは叔父、ということでいずれも江戸落語のサラブレッド。
今回の大銀座落語祭のテーマが「落語の明日」ということで、たしかにグランドフィナーレに相応しい顔ぶれかと思います。
・三遊亭金時 「紙屑屋」
このハナシは演者によって演出も色々、上方落語だと「浮かれの屑より」、その上方落語の方は前回の東西落語研鑽会でしたか染丸師匠がやってましたが、またそれとは違う江戸の味わい、金時さんのもなかなか面白い。長唄・小唄に都々逸と芸の幅が試されるネタですな。
・笑福亭鶴瓶 「死神」
以前に東西落語研鑽会にかけた鶴瓶版「死神」の再演ですが演出をかなり捻って来ましたね。
以前のもかなり良かったように思うのですが ( 泰葉さんのブログの2007/09/07 記事でも評価されてますな。この当時はまだ小朝夫人だった訳ですが )、御本人は納得されてなかったそうで、どうやら無駄を省いたのと筋を分かり易く練り直した感じです。
でもなぁ、、、一点引っ掛かるかな。。。
少々のネタバレとなりますが、更なる改良を欲して敢えて、サゲを割らない程度に言うとすれば、何が違うって鍵となる死神が幼馴染みの女だってのが一番の違いなんですが、彼女の子供時代のアダ名が「バケモノ」なんですね。これは2年前に初めて聴いた時には無かった設定でした。
どうやら身体が大きくて力持ちだった女の子、そりゃ子供の頃のアダ名ですから「村一番の美人」であっても「バケモノ」って言われるかも知れません。本名「おあき」の設定は和田アキ子さんイメージでしょうか(笑)。
しかし死神ですから一般名称としてもモノノケ、妖怪、つまり「バケモノ」な訳で、そのイメージに引きずられて感情移入が少し邪魔される感じです。観客も彼女を好きになる程でないと上手く落ちない感じの筋書きなのですが、その「バケモノ」って言葉の持つ強い響きに、その度にギクッとさせられる、その存在を遠ざけたく思えてしまう。
前回の感想で自分は以下のように書いてます。
今回の「鶴瓶版 死神」は、ダメ男だけど女に対する愛情が有り、それは誘惑に揺れる情けなさもあるし、後先の見えない情けなさもあるけれど、終わった後には「あ〜あ」「そんなんじゃダメじゃん・・・」って主人公と一緒になって残念な心持ちになる気がします。
今回はさらにサゲを一捻りしてあり、その点は上手い工夫だと思えただけに、先の「バケモノ」ゆえに遠ざけたくなる気持ちが少々残念でした。
それでも「イイ噺」ですけどね、鶴瓶版「死神」。
〈仲入り〉
・柳家 花緑 「不動坊」
これも色んな演者で聞いた噺ですが、これが江戸落語のカタチなのか花緑さん独特なのか、単刀直入に「打ち合わせ」シーンに入り、嫁を貰う経緯やそれに浮かれる部分をアッサリとした説明で済ます今回のような演出も山場が分散しなくて正解に思います。元々のサゲらしい「幽霊稼ぎ人」と「遊芸稼ぎ人」の洒落オチは現代じゃ通じませんので、今回も別のサゲが作られてました。
・桂 三枝 「誕生日」
桂三枝さんはいつも通りに古典ではなく独自の創作落語ですが、この噺は何度か聴いています。そうして考えてみると、古典も創作も大きな違いは無いですね。古典だって演者が歴史の中で工夫を積み重ねて伝承されているものだし、創作落語といえども演ずる度に工夫され、いずれ佳作は後世に残るのでしょうから。
噺自体、よくできたハナシで面白いですが、三枝師匠は間が抜群だと思うのです。マクラとネタの繋ぎ目も極く自然で、スムーズにハナシに惹き込まれて行きますし。
[参考]
・上方落語メモ【世紀末亭】
・落語のあらすじ 千字寄席
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・落語検索エンジン「ご隠居」
・東西落語特選
・招笑亭
・落語の舞台を歩く
落語の4席はどれも聞き応えあって、さすが千秋楽に相応しい。
全ての演目が終わり、一度幕が下りたところで再び幕が上がり、グランドフィナーレらしく本日の主な出演者に加えて、別会場に居た人も駆けつけての「六人の会」勢揃いなご挨拶。
そのヤリトリも贅沢な演芸という感じでした。
「大銀座落語祭」がひとまず終わるその挨拶。
そして昔テレビ(徹子の部屋?)でしたか小朝さんが「この落語祭を将来は全国各地でやりたい」と言っていたのをまさしく実現する第1弾として、来年の告知。
暗転した会場、ステージ上のスクリーンに大写しになったのは東国原宮崎県知事。
どうやら来年10月の連休を使って宮崎大落語祭だそう。
旅立ちですな。
最後は関東三本締めで「お開き」。

いつもの東西落語の倍もしたけど、さすが面白いイベントでした。