2009年09月14日
【映】私の中のあなた
あれこれ感想を綴る前に、まずは自分の健康に感謝だな。。。
(ネタバレしない程度に書きますが、見る気になった人はそこまでにしてくださいね。やっぱりだんだんディープになりますので(笑))
「泣かされる映画」かと覚悟して見に行ったんだけど、どっちかというと「考えさせられる映画」でしょうか。
まぁそこらは立場にも依るのでしょうが、イイトシして親になった経験の無い独りモンの男が見た感想としては涙は出ないです。
だけど「悩み」は残る。
むしろ「答えの描いてない社会派映画」とでもいうか。
見方は色々あるだろうけど、カップルで見る映画と言うよりは、「人の親」である人、あるいは今からなろうとする人、いずれはなるんだろうなと思う人、でまぁ少なくとも少しはモノを考える人に向いてる映画。
モノを考える人なら「(誰かが)可哀想」で済むハナシじゃないとは思うはず。
でもだからこそそれは「同情の涙」というカタルシスを提供する娯楽としての「泣ける映画」ではなくなってるように思う。
しかしそれでいて少しも押しつけがましいメッセージなど感じられないのは制作者のウデなんでしょう。
本作の監督は「きみに読む物語」のニック・カサヴェテス、ちょうど1年ほど前にアヤパンチョイスで見たあの作品も同じような感じで、淡々と綴られていましたから。
きみに読む物語 スタンダード・エディション [DVD]
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前作が「夫婦の愛」や「男女の愛」だとすると、本作は「親子の愛」や「家族の愛」でしょうか。
前作も「幸か不幸か」を考えると難しいリドル・ストーリー(結論を受け手に委ねるミステリー)だったけど、本作も一筋縄では収まってません。
思春期の子供を連れた親子で行くには結構生々しいかもしれない。
病人を抱えた家族にも生々し過ぎるかも。
劇中の音楽も良いし、前作同様に時間軸をシームレスに往復する映像手法で映画の中のドラマに魅き込むやり口は見事で、映画としての完成度は高いと思います。
だから「悩みを共有したい」という意味で万人に見せたい映画ではあるけど、映画として誰にでもオススメできるかというとディープ過ぎるかも・・・
それは観客に何かを伝える映画としての出来がいいからこそなんですけどね。
私の中のあなた
・公式サイト
・映画/私の中のあなた 映画作品情報 - cinemacafe.net
・私の中のあなた - goo 映画
・映画瓦版|私の中のあなた
・わたしのなかのあなた - Wikipedia
・映画「私の中のあなた」試写会の感想をお書きください。 - 共通テーマ - ブログパーク
10月に一般公開の映画のLivedoorブロガー枠の試写会。
場所は前にスラムドッグ$ミリオネアの試写会で訪れた配給会社の試写室、六本木ミッドタウンの高層階です。
試写会は続編でもない限りあまり予備知識を入れずに見に行くことにしてるんで、最低限の評判だけの頭。
つまり大雑把なところで
ってな把握。
(見終わった後でもこの把握は間違っては居ないのだけど、、、)
一昔前なら近未来小説のSFのような設定。
思い出したのは若き日のオビワン役の俳優が臓器ドナー牧場のような場所で生きる若者を熱演していた「アイランド」
アイランド 特別版 [DVD]
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そんなSFのようなハナシが先端医療として日常生活の隣にまで見え隠れしているというのが現代の難しいところ。
「医療倫理」なんて巷間叫ばれていますが、実際問題、当事者にとっては助かるのならば悪魔にだって魂を売るというのが親心かも知れません。
だからこそ法律で禁止したりそれこそ「倫理」で縛る必要が有るとも言える訳ですが、それで片付くのかというとまた疑問ですね。
さて
1.あなたの幼い子供が重度の白血病で骨髄移植や臓器移植なくしては余命幾ばくも無い。
2.あなたがた夫婦は健康だが、臓器提供者としての適合性は持って居らず、他にドナーを見つけるのは困難な状況だ。
3.そこに医者が「一つだけ方法が有ります」として「完璧なドナーたり得る子供を今から作ることは人工授精なら可能だ(ただし倫理には反する)」と言われた。
そこで
[Q1] あなたはこの人工授精に踏み切りますか?
[Q2] あなたはこの「妹」をどのように育てますか?あるいは育てるべきだとと考えますか?
そして10年が経ちます。いよいよ危険な臓器提供まで「妹」に課さなければいけない状況です。
[Q3] あなたはこの臓器移植手術に踏み切りますか?
そしてここまで真剣に考えたところで親心としては積極策を選んできた、「妹」にも納得させてきたつもりだったとしても、視点を変えてみれば難しいことに気付きます。
まず
[Q4] あなたは臓器提供者としてこの世に生を受けた「妹」だとします。10歳になりました。いままでいろいろやってきました。「姉」のことは大好きです。「家族」も大切です。で・・・どうしますか?どう感じていますか?
そしてさらに
[Q5] あなたは病弱で瀕死の「姉」だとします。状況は全て分かっています。さて・・・あなたはどう感じていますか?そして・・・
とても難しいですね。。。。
この映画の中では誰も「悪意」を持っている人は居ないように思われます。
でも「善意」が万人の幸せを意味するとは限らない。
人の生き死にを神様ではない人間如きがどうこうしようとすることは・・・・どうなんでしょう。
当事者になったら「どうこうしよう」とするんじゃないかと思います。
でも傍目から見れば「医療倫理」だとか理屈で考えて「正しい」ような答えを出せるかも知れません。
けどそれで当事者を納得させられるのかどうか。
簡単じゃないでしょうね。
映画のチラシ集と一緒に臓器提供意思表示カードが配られました。
・(社)日本臓器移植ネットワーク
何だか悪い冗談のような気もしてしまいます。
個人的には社会的地位が有ろうと無かろうと、金持ちでも貧乏人でも平等に、「臓器提供を受ける側」になれるほどに、手術費用などが健康保険の枠内だったり・・・なんてことは無いと思うので、臓器移植というのは結局のところ一部のお金持ちのための臓器売買の合法化システムのような気がしています。
たしかに提供者が増えれば1億円クラスの金持ちしか不可能だったのが3000万円クラスにはなるのかもしれない。けれど年収400万円貯金無しというレベルにはならないんじゃないかと。
そしてこういうのが傍目からの「ただの理屈」でしか無いことは先の映画の感想で述べたことと同じで、当事者の立場になると必死になるしかないのですから、当事者に対して何ら意味のある言論では無いとは分かっていますし、誰かが目の前に居ればそういうタワゴトは引っ込めて素直に「可哀想」と感じ、可能ならば何らかのお手伝いもするかも知れません。
でも「悩み」は残ります。
「善意」の人からは責められるのかもとは思います。
でもこの映画で感じたことの一つでもありますが、「善意」が万人の幸せを意味するわけでは有りませんし、「善意」が人を殺すことも有るほどに難しい。
ある意味、そういう「難しさ」に直面させてくれるという意義があるのかも知れません。
この映画自体は何らかの結論を押しつけようとはしていませんから。
考えるキッカケになりましたね。いい映画でした。
わたしのなかのあなた (Hayakawa Novels)
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私の中のあなた 上 (ハヤカワ文庫NV)
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私の中のあなた 下 (ハヤカワ文庫NV)
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(ネタバレしない程度に書きますが、見る気になった人はそこまでにしてくださいね。やっぱりだんだんディープになりますので(笑))
「泣かされる映画」かと覚悟して見に行ったんだけど、どっちかというと「考えさせられる映画」でしょうか。
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だけど「悩み」は残る。
むしろ「答えの描いてない社会派映画」とでもいうか。
見方は色々あるだろうけど、カップルで見る映画と言うよりは、「人の親」である人、あるいは今からなろうとする人、いずれはなるんだろうなと思う人、でまぁ少なくとも少しはモノを考える人に向いてる映画。
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でもだからこそそれは「同情の涙」というカタルシスを提供する娯楽としての「泣ける映画」ではなくなってるように思う。
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前作が「夫婦の愛」や「男女の愛」だとすると、本作は「親子の愛」や「家族の愛」でしょうか。
前作も「幸か不幸か」を考えると難しいリドル・ストーリー(結論を受け手に委ねるミステリー)だったけど、本作も一筋縄では収まってません。
思春期の子供を連れた親子で行くには結構生々しいかもしれない。
病人を抱えた家族にも生々し過ぎるかも。
劇中の音楽も良いし、前作同様に時間軸をシームレスに往復する映像手法で映画の中のドラマに魅き込むやり口は見事で、映画としての完成度は高いと思います。
だから「悩みを共有したい」という意味で万人に見せたい映画ではあるけど、映画として誰にでもオススメできるかというとディープ過ぎるかも・・・
それは観客に何かを伝える映画としての出来がいいからこそなんですけどね。
私の中のあなた
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10月に一般公開の映画のLivedoorブロガー枠の試写会。
場所は前にスラムドッグ$ミリオネアの試写会で訪れた配給会社の試写室、六本木ミッドタウンの高層階です。
試写会は続編でもない限りあまり予備知識を入れずに見に行くことにしてるんで、最低限の評判だけの頭。
つまり大雑把なところで
重度の白血病の娘を抱えた夫婦が、その娘を助けるために人工授精で遺伝子的に完全な臓器提供者たりうる「妹」を造り育て、10年ほど「計画通りに」進み、「幸せな家族」のはずだったのに、ある日突然その「妹」が「姉のためにもう臓器提供はしない」と自我を主張し、自分の身体を守るために母親を訴えた、で、その結末は・・・
ってな把握。
(見終わった後でもこの把握は間違っては居ないのだけど、、、)
一昔前なら近未来小説のSFのような設定。
思い出したのは若き日のオビワン役の俳優が臓器ドナー牧場のような場所で生きる若者を熱演していた「アイランド」
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「医療倫理」なんて巷間叫ばれていますが、実際問題、当事者にとっては助かるのならば悪魔にだって魂を売るというのが親心かも知れません。
だからこそ法律で禁止したりそれこそ「倫理」で縛る必要が有るとも言える訳ですが、それで片付くのかというとまた疑問ですね。
さて
1.あなたの幼い子供が重度の白血病で骨髄移植や臓器移植なくしては余命幾ばくも無い。
2.あなたがた夫婦は健康だが、臓器提供者としての適合性は持って居らず、他にドナーを見つけるのは困難な状況だ。
3.そこに医者が「一つだけ方法が有ります」として「完璧なドナーたり得る子供を今から作ることは人工授精なら可能だ(ただし倫理には反する)」と言われた。
そこで
[Q1] あなたはこの人工授精に踏み切りますか?
[Q2] あなたはこの「妹」をどのように育てますか?あるいは育てるべきだとと考えますか?
そして10年が経ちます。いよいよ危険な臓器提供まで「妹」に課さなければいけない状況です。
[Q3] あなたはこの臓器移植手術に踏み切りますか?
そしてここまで真剣に考えたところで親心としては積極策を選んできた、「妹」にも納得させてきたつもりだったとしても、視点を変えてみれば難しいことに気付きます。
まず
[Q4] あなたは臓器提供者としてこの世に生を受けた「妹」だとします。10歳になりました。いままでいろいろやってきました。「姉」のことは大好きです。「家族」も大切です。で・・・どうしますか?どう感じていますか?
そしてさらに
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「善意」の人からは責められるのかもとは思います。
でもこの映画で感じたことの一つでもありますが、「善意」が万人の幸せを意味するわけでは有りませんし、「善意」が人を殺すことも有るほどに難しい。
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コメント一覧
1. Posted by toshi 2009年09月15日 16:22
映画を見ていないけれど、
コメント見てると、無茶、難しい内容ですね。
自分の娘を救うために、ドナーになるべく娘を作り、育てる。
あり得るだけに、つらいですね。
最近、人間の寿命って、人間が関与していいのかな?
生きている人たちが、一生悩む十字架を背負うのはどうかと?考えるようになっってきたのです。
やはり、どこかで、人として手をつけてはいけない事ってあるのではないでしょうか。?
とは言いながら、当事者になると、変わってしまうのですが。
コメント見てると、無茶、難しい内容ですね。
自分の娘を救うために、ドナーになるべく娘を作り、育てる。
あり得るだけに、つらいですね。
最近、人間の寿命って、人間が関与していいのかな?
生きている人たちが、一生悩む十字架を背負うのはどうかと?考えるようになっってきたのです。
やはり、どこかで、人として手をつけてはいけない事ってあるのではないでしょうか。?
とは言いながら、当事者になると、変わってしまうのですが。
2. Posted by るみん 2009年09月16日 01:32
うん。でもまぁよくできた名作だと思うよ。
難しいというか悩ましいというか。
悪気は無いんだけど、母親の「私がこんなに犠牲を払ってるんだから、家族のみんなもそれなりに犠牲を払って当然でしょ」みたいな部分が悪い人みたいに見える。
けど、そりゃ当然の思いだよね。責められない。
役者さんの演技も深かったのでチャンとその辺りの悩ましさが観客に伝わったんだと思うの。
難しいというか悩ましいというか。
悪気は無いんだけど、母親の「私がこんなに犠牲を払ってるんだから、家族のみんなもそれなりに犠牲を払って当然でしょ」みたいな部分が悪い人みたいに見える。
けど、そりゃ当然の思いだよね。責められない。
役者さんの演技も深かったのでチャンとその辺りの悩ましさが観客に伝わったんだと思うの。
3. Posted by honu 2009年09月22日 23:11
初めまして!
同じ試写会場で観たんですね(^.^)
ストーリーの内容をほとんど把握せず、キャミーが出てるから〜♪とお気楽に参加した私でしたが、“命の尊厳”について、深く考えさせられてしまいました…。
とても難しい問題ですよね。
姉妹役の2人の若手女優さんの名演技に、私はしっかり泣かされてしまいました(^_^;)
同じ試写会場で観たんですね(^.^)
ストーリーの内容をほとんど把握せず、キャミーが出てるから〜♪とお気楽に参加した私でしたが、“命の尊厳”について、深く考えさせられてしまいました…。
とても難しい問題ですよね。
姉妹役の2人の若手女優さんの名演技に、私はしっかり泣かされてしまいました(^_^;)
4. Posted by るみん 2009年09月22日 23:42
こんばんは。
お互いLivedoorの常連さんみたいですね(笑)。モニターの当たりが良い(笑)。
この映画はワリと早い段階で結末が読めたのも涙腺に来なかった原因かも知れません。
お兄ちゃんがビルの屋上の落ちそうなトコロで悩んでる風で似顔絵をちぎって風に飛ばすところは、「命の瀬戸際」で「自己選択してる(彼は死なないことを選んでる)」というイメージの挿入だと思います。少々あざといwwけど、「家族の問題」という意味で、あのお兄ちゃんについてそれまで細かい説明が無い分を埋め合わせてる気がします。
それはともかく自分の涙腺は動物映画とか戦争映画で弱いですね。
お互いLivedoorの常連さんみたいですね(笑)。モニターの当たりが良い(笑)。
この映画はワリと早い段階で結末が読めたのも涙腺に来なかった原因かも知れません。
お兄ちゃんがビルの屋上の落ちそうなトコロで悩んでる風で似顔絵をちぎって風に飛ばすところは、「命の瀬戸際」で「自己選択してる(彼は死なないことを選んでる)」というイメージの挿入だと思います。少々あざといwwけど、「家族の問題」という意味で、あのお兄ちゃんについてそれまで細かい説明が無い分を埋め合わせてる気がします。
それはともかく自分の涙腺は動物映画とか戦争映画で弱いですね。